第32章 譲らぬリヴァイ!譲らぬハンジ!デスマッチ!
そして、次は頬に触れてみた。
自分の父親は毎朝髭を剃っていたが、よくよく考えると、リヴァイが髭を剃っているところをクレアは見たことがない。
シャワー室の洗面台に形式的に剃刀が置かれているのは記憶していた。
しかしそれが果たして定期的に使われている物なのか、疑問に思えるほどリヴァイの頬も顎もツルツルだった。
もちろん、リヴァイが熱心にスキンケアをするような男ではないのは知っている。
だからこそ思うのだ。
「はぁ……兵長、羨ましすぎです……」
それによく見れば切れ長の瞼からは流れるように整った睫毛、高い鼻。
リヴァイの顔のパーツは、どれをとってもクレアを羨ましくさせる要素ばかりだった。
それにしても本当に気持ちよさそうに寝息を立てて眠っている。
こんな無防備なリヴァイの姿を見たことがある兵士が他にいるだろうか?
できるならそれはどうか自分だけであって欲しいと、クレアは思わずにはいられなかった。
人類最強の兵士長
孤高の虎
獲物を射殺す三白眼
普段はこんな風に呼ばれているリヴァイだが、今のリヴァイはどう見たって無防備に眠る1人の美少年だ。
こんな年上の恋人に美少年など失礼かもしれないが、自分の中だけの秘密にしておくならいいだろう。
そう思うと、自然と口角が上がってしまった。
「それにしても、このままじゃマズイわよね…」
クレアは上半身裸のままのリヴァイにかけてやろうと、ベッドの足元にたたまれている毛布の端めがけて思いっきり腕を伸ばした。
「ん……!んーー!もうちょい……取れた!!」
なんとか膝枕をキープしたまま毛布を取ることに成功すると、ひろげてリヴァイにかけてやった。
「私も少し寝ないと、明日キツイかなぁ…」
クレアはいつまででもリヴァイの寝顔を見ていたかったが、明日の訓練の事を考えれば仕方ない。
「兵長、おやすみなさい……」
枕に手を伸ばすと、クレアは器用に上半身をベッドに倒し、目を閉じた。
リヴァイが息を吐けば、下腹部から布越しに温かい吐息がかかり少しこそばゆく感じる。しかし今はそれさえも愛おしい。
「温かいです…兵長…」
大好きな人の温もりを感じながら、クレアも眠りについた。