第32章 譲らぬリヴァイ!譲らぬハンジ!デスマッチ!
「クッ…………」
さすがにもう限界だった。
喉が、食道が、胃の中が焼けつくように熱く、頭の中は脳が重石になったかのようにグラグラと重い。
そして、じっと立っているはずなのに床と天井がクルクルとまわってるみたいな錯覚に陥っている。
でもここでひっくり返れば勝負はふりだしだ。
「……兵長。」
チラリとクレアの方を見れば、不安げに瞳を揺らして自分を見つめている。
何がなんでも失態を晒すわけにはいかない。
リヴァイは必死に歯を食いしばりながら嵐が過ぎ去るのを待った。
シンと静まり返ってしまったハンジの執務室では、小さくイビキをかいているハンジの寝息と時計の針の音がコチコチと鳴り響いている。
「……モブリット、これで文句はねぇな……」
最後のテキーラを煽って数分間、じっと耐えて見せたリヴァイは文句はねぇなといったオーラをグサグサとモブリットに刺しながら言い放った。
そんな姿を見せられてしまえば、モブリットもハンジの負けを認めざるを得ない。
「もちろんです、申請書は明日中にはサインをさせますのでご安心下さい。」
「任せたぞ。おい、クレア、行くぞ…」
「あっ、待って下さい、ここの片付けをしてからでないと……」
精製の最中でまさかのバトルが勃発してしまった為、後片付けが残っていた。
「あぁ?!」
しかし、一刻も早く自室に戻りたかったリヴァイは思いっきり不機嫌な表情をクレアに向けた。
「クレア、片付けはいいから…もう戻りなさい。団長も兵長も、分隊長の我が儘に巻き込んでしまい申し訳ありませんでした……資料は私が責任を持って確認をしておきます。」
「モブリットさん……」
「すまないが、ハンジがこんな状態では君に頼むしかなさそうだ。宜しく頼むよ。」
「はぁ…お前も苦労が絶えないな…ハゲに塗る薬はないから気をつけろよ。」
全ての後始末を引き受けたモブリットに、少し同情しつつも、3人は執務室を後にした。