第32章 譲らぬリヴァイ!譲らぬハンジ!デスマッチ!
そして、いよいよ酒瓶の残りが一杯分になってしまった。
「おそらく次で決着がつくだろう。」
静かに観戦していたエルヴィンがコソッとクレアに耳打ちをした。
「次で…ですか?」
確かに2人の顔を見ればエルヴィンの予想通りもう決着が付きそうな雰囲気だ。
ハンジは既に座っているのも辛そうだし、リヴァイもなんとか平静を装ってはいるが、ギリギリと奥歯を噛み締めて絶えている様にも見える。
2人の様子を心配しながらも、モブリットはカードを切ると手際よく配った。
お互い表情を変えずにカードをチェンジする。
果たしてどちらの役が買ったのだろうか
──ガタンッ!!──
「いやったぁーーーー!!スペードのロイヤルストレートフラッシュだぁーーーー!!!」
立ち上がり、勝利の雄叫びを上げたのはハンジだった。
「クソッ!!」
リヴァイは負けたカードをテーブルに叩きつけて残りのテキーラを手酌で注いだ。
酒には多少の自信があったリヴァイだったが、そもそもテキーラとはこんなに短時間でガブガブと飲むタイプの酒ではない。
さすがのリヴァイもこれを飲んだあと意識を保ってられるかどうか一抹の不安がよぎった。
人類最強もテキーラの前では完敗か……
しかし負けてしまったものはしょうがない。何がなんでも潰れるわけにはいかないと覚悟を決めたその時だった。
──ガッターーーン!!──
「ハ、ハンジさん?!」
まさかのハンジが雄叫びを上げた後、ガッツポーズをしたまま床に吸い寄せられるように倒れてしまった。
「分隊長!!分隊長!!」
モブリットが必死に呼びかけるが、起きる様子はまったくない。
それを見ていたリヴァイは悪い笑みをこぼしながらモブリットに問いかける。
「おいモブリット。この勝負は先に潰れた方が負けだったよな。ってことはポーカーで勝っても先に潰れたクソメガネと、ポーカーには負けたがまだ酒を飲んでない俺は今引き分け状態だ。これで俺がこの酒を飲んで立っていられたら俺の勝ちで文句はねぇな?!」
「い、異論はございません……」
ニヤリと口角を上げたリヴァイは残りのテキーラをグイッと煽りガンッとテーブルに置いて見せた。