第32章 譲らぬリヴァイ!譲らぬハンジ!デスマッチ!
「へ、兵長…?どうされましたか?」
「ん?リヴァイ?どうしたの?こんな時間に?」
「おい、クソメガネに用事がある。」
もう時刻は11時をまわろうとしている。しかしリヴァイは手に書類の類は持っていない。いつもの無表情だが仕事の話ではなさそうだ…
ハンジも少し驚いている様子。
パタンと後ろ手で扉を閉めるとリヴァイはツカツカとハンジの前に立ち、右手を腰に当て口を開いた。
「おいクソメガネ…次の休日、クレアを連休にさせろ。」
「ええ!?ちょっといきなりどうしたんですか?!」
いきなり過ぎる要求にハンジより先にクレアが驚き持っていたビーカーを落としそうになってしまう。
調査兵団は基本6日間訓練の1日休み。
月に4日は休日が保証されていることになるが、上官に申請をすれば追加で2日は休みを取得できる制度がある。
この制度を定期的に使っている兵士は殆どいなかったが、実家に親や兄弟がいる者は、時折帰省するために使っているようだった。
もちろんクレアはシガンシナ区出身で、帰る実家も無ければ他に身内もいなかった為、この制度を利用した事は一度もない。
これからも特に使う事など無いだろうと思っていたのだが、まさかのリヴァイがクレアに変わり申請をしてきた。
しかも、そこにクレアの意志は関係なさそうだ。
「申請書も書いてきた。文句はねぇな。」
リヴァイはジャケットの内ポケットから折りたたんだ申請書と思われる紙を、たたまれたままハンジに放り投げると、早く了承のサインをしろとばかりに鋭い眼光で催促をして見せた。
リヴァイは当然その申請は受理されるものだと思って疑わなかったのだが
「リヴァイ、それは承諾しかねる!!」
右の手のひらをずいっと前に出したハンジの一言で、リヴァイはバッサリと断られてしまった。
「なんだと…クソメガネ…」
リヴァイのこめかみ辺りに青筋が立ったが、そんなのお構いなしといった風にハンジはわざとらしくツーンとソッポを向いてしまった。
「分隊長……」 「兵長………」
モブリットとクレアはもしかしなくても嫌な予感しかしなかった…