第31章 それは奇行種が決めること
「クレアの事になると次から次に心配が絶えなくなってるリヴァイ、実に人間らしいよ。」
「おい、からかってるのかよ!」
そらしていた瞳を再びハンジに向け少しばかし睨んでみせる。
「いいや。それが人間らしくも面倒くさい所、でも面白い所でもあるんだよ。大事なモノが増えれば増えるほど悩みも絶えなくなるし、抱えるモノも多くなる。背負う荷も重い。」
「……」
「でも、そんな存在がいるからこそ、意志は強くなり、その人間自身も強くする。」
「!!?」
「私は感情を失くした殺戮兵器の人類最強リヴァイより、大切な存在をひたすらに守ると誓った人類最強リヴァイの方が好きだよ!」
そう言いながらハンジは開けっ放しのカーテンからふり注ぐ月明かりを見つめながら続けた。
「だから私は嬉しかったんだよ。リヴァイがクレアと出会ってからどんどん変わってく様子を見れたのがね。昨年の秋にクレアを連れ出した時も、年末の壁外調査の朝に“悔いなき選択”を聞かせてくれたときも本当に、嬉しかった。もちろん、大事な友人としてね……」
「そうかよ……」
「まぁ、今回のみたいな事が二度と起こらないとは言い切れない。でもクレアはそれに立ち向かう意志も力も持っている。リヴァイだってどんな事があっても手放すつもりはないんでしょ?」
「……無論だ。」
「ならいいじゃないか。何度だって守ってやればいい。そんな事さ、最初からリヴァイは分かっているんだし。」
「あ?どういう事だ…」
「人ってモノは、分かりきっていることでも誰かに言ってもらいたい時があるんだよね。実に面倒臭いんだけどさ。今日のリヴァイは私にこう言って欲しかったんじゃない?“リヴァイが守るなら大丈夫!!”ってね!」
バーンと拳銃を打つように人差し指を立てて右手を上げると、ウインクしながらハンジはニカッと笑った。
「ハッ、クソメガネのくせに偉そうだな。」
悪態をつきながらグラスに口をつけるが、ハンジの言葉は紛れもなくリヴァイの胸を撃ち抜いていた。