第31章 それは奇行種が決めること
あんな事件があった後だ。
十中八九クレアの事だろうと思っていたが、まぁ見事に正解のようだ。
「…いったい何が変わったと言うんだ。」
「んー、うまく言えないけど、人間らしくなったって表現が合ってるかな?悩んだり、怖くなったりすることが増えたんじゃない?」
「!?」
「ファーランとイザベルが死んでからのリヴァイは全ての感情を押し殺して訓練に打ち込んでてさー、それはもうビリビリと殺戮兵器みたいな顔してる時もあったかなー。正直心配した時もあったよ。まぁ長い付き合いの私はリヴァイが優しい事も、仲間想いをだってこともちゃんと知ってたからひたすらに見守ってたけどね。」
「はぁ?強引に酒場に飲みに連行したり、娼館に放り込もうとしたり、無理矢理女押し付けてきたりするのは、見守りに入るのか?」
「ハハハ、そんなこともあったね!でも今のリヴァイは彼らが生きてた頃よりずっと穏やかで人間らしい顔をしてるよ。そんなのに気づいてるのはエルヴィンだったりミケだったりリヴァイ班のメンバーだったり、ほんの少人数だと思うけどね。」
「……」
「リヴァイは地下街でただ“生きる”事に必死だったからさ、あまり馴染みがなかったかもしれないけど、人間ってものは結構面倒くさいんだよ。」
「いったい何が言いてぇんだよ。」
「何が聞きたいのか分からなくて此処にいるリヴァイがそれ言っちゃう?ハハハッ!!」
「チッ………」
ハンジは残りのウォッカをクイッと煽ると、手酌でまたツーフィンガー分注いだ。
「クレアの事で此処に来たんでしょ?」
「……」
ハンジの顔を見ていた目を瞳だけ右にそらした。
図星を突かれたと思ったのだろう。
「今回の事は私だって見ていて辛かったさ。でも、クレアはちゃんと自分の意思を貫いて解決に導いたじゃないか。」
「今回はな…エルヴィンの提案した、これからお前の流す噂とやらを信用していない訳ではないが……アイツの鈍感ぶりは致命的だからな…まぁ色々と考えちまう所はある……」