第31章 それは奇行種が決めること
「シシシ、そりゃどーも。」
悪態づいたリヴァイの言葉も褒め言葉と捉えたハンジは上機嫌になり、3杯目を注ぎ始めた。
「おい、あんまり飲むなよ。お前を盲信しているどっかの誰かが説教しにきても知らないからな。」
「厳しいこと言うなよ〜。コレ飲んだら寝るさ。」
それを聞くとリヴァイは最後のひと口を煽り、コトンと積まれた本の上にショットグラスを置き、扉に向かって立ち上がった。
「……ハンジ、助かった。」
扉の前で振り返ると、それなりに絞り出した感謝の言葉を口にする。
「いつでも大歓迎だよ。心の扉にカギはかかってないからね!!」
「気持ち悪いこと言うな、クソメガネ……」
そう言い残しリヴァイはハンジの部屋を後にした。
「……」
ハンジとは性格も、感性も、衛生基準もまったく真逆で合わない。
でもハンジの言葉にコトンとツキモノを落とされる事が今まで何度あっただろうか…
今だってそうだ。
──人ってモノは、分かりきっていることでも誰かに言ってもらいたい時があるんだよね──
……本当にその通りだった。
自分はこんな守り方でもいいんだと言ってもらいたかったのだろう。
他でもない、自分をよく知る人物に。
その証拠に、今の自分の身体は早くクレアを抱きしめて眠りたがっている。
言葉にならなかったモヤモヤが晴れた証拠だ。
いつだかクレアが言っていた。
正反対の性格だからこそ合うものがある、と。
「ハッ、否定はしねぇが肯定もしたくはないな……」
素直に認めぬままリヴァイは自室の扉をあける。
そっとベッドに近づけば身体を丸めて寝息を立てている愛しい恋人。リヴァイもベッドに入るとそっと抱きしめキンモクセイの香りを吸い込んだ。
すると、クレアの寝息につられるように徐々に眠気がやってくる。
勇敢にも戦うことを決めたクレアの唇に、リヴァイは労いのキスをすると、再び目を閉じ眠りについた。
──おまけストーリーfin──