第31章 それは奇行種が決めること
「…………」
やってしまった感いっぱいの表情で、こちらを見つめているクレアに、リヴァイは小さくため息をつくと持っていたタオルで顔周りを拭いてやった。
頬の絆創膏は取れてしまい、治りかけの傷がまだ痛々しい。
「傷だらけの上に平手打ちか、散々だったな。」
一通り拭いてやるとベッドに座らせ、リヴァイも隣に腰掛けた。
「あ、あの…リヴァイ兵長…」
「よくもまぁ、人前で俺がお前の事を好きだのなんの、俺のことが好きだのなんのと、叫んでくれたな…」
やっぱりその話かと、クレアはやっとの事で冷ました顔が再び熱くなるのを感じた。
「す、すみません!!なんか、カオリナイトさんの勝手な言い分が許せなくて、きっとカッとなってしまったんだと思います……本当に兵長の事まで…上から目線に…すみませんでした…」
しおしおとうなだれていくクレアにリヴァイは肩に手をまわして抱き寄せてやった。
「別に怒ってなどいない。お前の言ったことに嘘は無いからな。」
「兵長…?!」
「お前があんな感情的になって俺への想いをぶつけたのは初めてだったな。怒りに任せて好きだと言われるのも悪くないが、言った対象が俺ではなくカオリナイトだったのが気に食わなかった。」
「え?!」
「ああいうお前も悪くない。たまにはあんな風に煽ってくれても構わないからな。」
「兵長…それって…どういう…」
すると、リヴァイは自室の棚から小さな薬箱を持ってくると、クレアの頬に、手のひらに、両膝に、太腿に、剥がれてしまったガーゼや包帯を巻いてやった。
「明日の朝、また訓練の前に医務室に行けよ。」
「…は、はい。」
「とにかく無事で良かった……」
薬箱をサイドテーブルに置くと、優しい力でクレアを抱きしめた。
「ご心配おかけしてすみませんでした…」
「今回の事で女の嫉妬がどれだけ面倒くさいのかよく理解できた。今度何か変な事があったらすぐに報告だぞ。まぁ、こんなバカげた事が二度と起こらないように、ハンジがなんとかするとは思うがな。」
「は、はい…」
その返事を聞くと、リヴァイはクレアの顎を掴み目を合わせ、そのまま唇を近づけていった。