第31章 それは奇行種が決めること
不安げに見つめてくるクレアに、リヴァイは仕方なく少し猶予の時間を与えてやることにした。
「今からシャワーを浴びてくるからそれまでに思い出しておけよ…」
「あ、あの…」
そう言うと、クレアの返事も聞かずに、タオルと着替えを持ってリヴァイはさっさとシャワー室に入って行ってしまった。
──ザァァァァァァァァァ──
すぐにシャワーの出る音が聞こえてきた。
クレアは、一人きりになったベッドの上で改めて先程まで起こっていた事件について冷静に思い返してみた。
──コチコチコチ──
──ザァァァァァァァァァ──
「………」
無機質な音と共に徐々に蘇ってくる記憶。
「あ……うぅ……」
確かにフレイアの言うとおりだ。
気が立ってたとはいえ、もっと他の言い方は無かったのかと思わず両手で顔を覆ったままジタバタと足をバタつかせてしまった。
まさかのまさか、それをリヴァイ達が聞いていたなんて…思ってもみなかった…
もう、顔から火が出る程恥ずかしい。
ジタバタとのたうちまわってるが、なんとかしないと自分の顔面は今にも蒸気を上げてしまいそうなくらい熱かった。
「もぅぅぅ!!」
いてもたってもいられなくなったクレアは踏ん張るように立ち上がると、水道から水を出して火照った顔にバシャバシャとかけ始めた。
ついでに嘔吐した挙げ句に舌を噛んで出血している口内にも水を含みブクブクとうがいをする。
吐き出した水は薄く赤茶色に色づいていて、鼻から通る鉄臭さがなんともいえない不快感を残した。
何度も何度も顔に水をかけ、何度も何度も口に水を含み、内と外と両方からこの熱を下げようと必死になっていたら、いつの間にか背後にリヴァイが立っていた。
「おい奇行種、その様子だと思い出したみてぇだな…」
一心不乱に水を被りながら、自分がシャワー室から出てくるのにも気づいていないクレアに、リヴァイは呆れたように声をかける。
リヴァイの声にビクッと身体を引くつかせたクレアは水をポタポタと滴らせたままゆっくり振り返った。