第31章 それは奇行種が決めること
「あの、団長…この度はこの様な事件で皆様を巻き込んでしまい申し訳ございませんでした!!」
クレアは深々と頭を下げるが、エルヴィンの表情は至って穏やかだった。
「いや、こちらこそすまなかった。なかなか証拠があげられなくてね。結局君を傷だらけにしてしまったね。」
「そんな事は……」
「そこで1つ提案なんだが。クレアがここまで身体を張ってくれたんだ。ハンジ、今回の一件をそれとなく自然に噂を流すことはできるか?」
「え?噂を流す?!」
「エルヴィン、それはいったいどういう事だ?」
まさかの提案にリヴァイは怪訝な表情で睨んだ。
「せっかく班長の2人には箝口令を出したのに、噂を流すの?」
「そうだ、こういう事はどこからともなくわいた噂の方が拡がりやすく、話題になりやすい。もちろんリヴァイとの関係は出さなくていい。クレアに手を出すと痛い目に合うらしいと、それとなく噂を流すんだ。それと同時に理由を伏せられまま自主退団する兵士がいれば、噂は自然に尾ひれをつけて、もうクレアをけしかけようと企む者は現れなくなるだろう。」
「確かに一理ある提案だが…肝心の噂はそんなに簡単に流せるものなのか?」
リヴァイがチラリとハンジを見やると、ハンジは鼻息を荒くしながら拳を握り、興奮しだした。
「できるよ〜!できるに決まってるじゃん!人は噂話が大好きだからね!娯楽の少ない調査兵団の様な所では特にね!人間の心理をついた情報操作は私の大好物さ…クレア、この件は任せてもらっていいかい?っていうかいいよね?いいよね?!!」
「え、えと…」
グイグイと自信満々にこられてはもう断ることなどできない。クレアは御意と言うしか選択肢はなさそうだった。
「はい。ですが、なるべくお手柔らかにお願いします…」
「よっしゃー!!!決まりだね!」