第31章 それは奇行種が決めること
真っ暗な中、兵舎の裏側までやってくると何やら女の声が聞こえてきたため、3人は木の影に身を潜めながらその声のする方に近づいていった。
兵舎にいる人間に気づかれるのを警戒しているのだろうか、声はそこまで大きくはないが、その声色からは、確かな怒りや敵対心がむき出しになっていた。
「あれは……」
ハンジがリヴァイとフレイアに目配せをすると、クレアが女兵士に後ろから羽交い締めにされた状態でカオリナイトと向き合ってる姿が目に飛び込んできた。
「え?カオリナイトさん?それにあれは…ミメットさん…どうして?」
フレイアはここ数日の事件の犯人がカオリナイトであった事はもちろん、ミメットの事も知らなかった。
「おいハンジ、クレアを羽交い締めしてるやつもカオリナイトの同期だったか?」
「う、うん。確かそうだ、ミメット・フレデリック。101期の兵士だ。」
同じく、ハンジとリヴァイも、ミメットの存在は今ここで初めて知った。
しかし、ここで決定的な証拠を抑えれば現行犯として連行できる。クレアの為を思えばすぐに飛んでいってやりたい3人だったが、ぐっと堪えて暗闇で対峙するカオリナイト達の会話に耳を傾けた。
「…………うっ!!」
迂闊だった。
リヴァイからは1人になるなと散々忠告を受けていたが、抱えきれない程のにんじんの葉っぱを見た瞬間、すぐにでもデイジーに食べさせてやりたくなり、クレアはつい走って行ってしまった。
フレイアがすぐ後ろをついてきてくれてるだろうと油断をしていたのだ。
しかし、クレアが1人になる所を今か今かと狙っていたカオリナイトがこのチャンスを逃すはずはない。
ミメットと組んで後ろから口を塞ぐと、カオリナイトはそのままずるずると兵舎裏までクレアを連れて行った。
無言のまま暗闇で対峙すること数分。
先に口を開いたのはカオリナイトだった。