第31章 それは奇行種が決めること
どうすればいい。
リヴァイは今、この扉1枚隔てた向こう側でクレアと男女の交わりの真っ最中だ。
「(はぁん…兵長…兵長…、リヴァイ兵長……!!)」
「(おい、そんなに煽るなよ。)」
「(あっ!ダッ…ダメです兵長。そんな所に跡つけたら……キャッ、キャアア……)」
「(これは俺のモノだっていう印だ。お前は何があろうと俺のモノだ。絶対に忘れるなよ。)」
聞いてはいけないものを聞いてしまったのは百も承知だ。
しかし、リヴァイが激しくクレアを求める言葉に鈍器で頭を殴られたような衝撃を受け、足がまったく動かなくなってしまったのだ。
今まで女兵士を寄せつけなかったリヴァイだ。
当然カオリナイトはクレアがハンジの部下であることを理由に、はたまた自身の高い戦績を理由に、はたまたなにかしらの理由をつけ、無理矢理リヴァイにいいよっているものだと思いこんでいた。
しかし実際は逆であった。
リヴァイはひたすらにクレアを求めて激しく抱いていた。
この様子からすると、リヴァイは始めから自分を執務室に招き入れるつもりはこれっぽちもなかったのだろう。
自分は、クレアとの激しい情事を聞かされるためだけに呼び出されたのだ。
「…………………うぅ…」
今まで自分を肯定し続けてきた清らかな想いを踏みにじられた気分に陥ったカオリナイトは、ズキンと痛む胸をおさえながら懸命に足を動かしその場を去ることしか出来なかった。
──翌日──
その日リヴァイはなるべくクレアに1人になるなと忠告をし、目を光らせていた。
昨夜は鉢合わせになることも、部屋に乱入される事もなかったのだ。
おそらくはこのままおとなしくなるだろう。
クレアには自分でなんとかすると言わせてしまったが、このまま何も起こらなければそれに越したことはない。
その日1日訓練は無事に終了した。
鞍や立体機動にまた何か細工をされていたらと危惧していたが、その様なことは起こらなかった。
しかし、募りに募らせた慕情から膨れ上がった女の嫉妬はこれで終わりではなかった。