第31章 それは奇行種が決めること
クレアは多岐にわたり高いスキルを持った兵士であったが、どこか抜けているところがあると前々から思っていた。
良く言えば、疑うことを知らない純真。
悪く言えば救いようの無い鈍感だ。
そんな性格を逆手に取り、ジリジリと嫌がらせをして追い詰め、リヴァイと一緒に居続けることのリスクを突きつければ、バカ正直に自滅してくれると踏んでいたのだが……
もうひと押しの所でリヴァイに見つかってしまった。
予定した計画からは少しずれてしまうが、今夜リヴァイの元を訪れれば自分の疑問に答えてくれると言った。そのため2人の関係をはっきりさせたかったカオリナイトは、リヴァイの呼び出しに応じることにしたのだ。
一歩、また一歩とリヴァイの執務室に近づくにつれ、胸の鼓動が高鳴っていく。
願わくは、2人は恋愛とは無関係であってほしい。
リヴァイはこの先も、自分の命が尽きるまで清廉な想いを寄せることのできる存在であり続けてほしい。
そう願えば願うほど、心臓は期待と不安で煩く鳴り響いた。
やっとの事でリヴァイの執務室にたどり着き、ノックをしようとしたその時だ。
「(なぁクレア、もう挿れてもいいか?早くお前の中に入りてぇ。)」
「(おい、なんとか言えよ。)」
「(クレアが欲しい…もう限界だ。)」
「(ま、待ってくだ……ここ、執……)」
「(黙ってるならこっちのいいように解釈するぞ。)」
「(んん!!!)」
どういう事だ。
執務室の中はリヴァイ1人ではなかった。
微かだが女の声がする。
そしてその声の主をあろうことか「クレア」と呼んでいたように聞こえたが。
まさか、まさか今この部屋では…
「(あぁん!!)」
「(いい声だな。もっと、もっと聞かせろよ。)」
「(あぁん…!ダ、ダメです!こんな所じゃ…!誰かに…聞かれたら……)」
「(ハッ、こんな時間だ。気にするな。)」
2人の声に呼応するように、床が軋んでいる音が規則的に聞こえてくる。
ここまで聞こえてしまえば、何をしているかなど想像するのは簡単だ。
嘘……でしょ……
カオリナイトは思わず両手で口を塞いだ。