第30章 奇行種、異変
「当たり前だ。俺が気づかない訳ないだろ!あいつは気を失う直前でもアンカーを射出して命を繋いじまうような奇行種だ。だが、“人為的”に仕組まれた策略のようなものに関しては耐性がない。だから頭の悪い女の嫌がらせの類にいともあっさりやられちまったんだよ。」
「同感だリヴァイ……クレア本人もフレイアとリリアンに指摘されてようやく気付いたらしいからね。でもどうする?昨日私が話を聞いた時点では容疑者は分からないと言っていたよ。」
「容疑者なら今しがた会ってきた。」
「えぇ??本当に?!誰なの?」
「クレアより一年上のカオリナイト・レビだ。クレアの入浴中にまた嫌がらせをするかもと思ってな。待ち伏せしていたら現れやがった。」
「カオリナイト…あまりリヴァイに熱を上げていた様には見えなかったけど…」
「あぁ、確かに直接押しかけられたりした事はなかったな。」
「そうか…きっと秘めた想いが募り過ぎてストレス爆発したのかな?」
「細かい事情までは分からねぇよ。」
「しかしリヴァイ、容疑者が絞り出せているのならどうするつもりだ。」
エルヴィンはイスに腰掛けると両肘をついた。
「クレアに何かしようとしていたのは確実だが、俺が声をかけたから未遂に終わった。アイツはクレアを退団させたいらしいが、嫌がらせや馬具の件に関しては証拠がない。傷害事件としての立件は無理だろうな。」
「そうか……」
「じゃあ、もういっそうの事、クレアの事公表して、俺の女に手を出すなって言っちゃえば?」
「……クソメガネ、それは俺も最初は考えた。それで今回はうまくいくかもしれないが、クレア自身に隙があれば今後また他の人間によって同じ事が起きるだろう。次は立体機動装置なんかに細工をされてみろ。命にかかわるぞ?まぁそうなりゃあ証拠云々関係なく、エルヴィンに団長としての権力を行使してもらう事になるがな。」
「じゃあどうするのさ?!」
焦れたハンジはリヴァイに掴みかかろうとするが、リヴァイの話も十分に理解できる。
ハンジはその手をグッと握ると自身の膝に静かに置いた。