第30章 奇行種、異変
「兵長?!何故ここに?」
クレアはまさかのリヴァイの登場に驚き持っていた荷物を落としてしまった。
「おい、何やってるんだよ。大丈夫か?」
リヴァイも身を屈めて落ちたタオルや着替えを拾い、手渡してやろうとすると、目に飛びこんできたのは手のひらの生傷、それに両頬に付いた切り傷と擦り傷だ。おまけに着替えたばかりのズボンの両膝と右の外腿からもうっすらと血が滲んでいる。
その痛々しい身体を見て、思わずリヴァイはそっとクレアを抱きしめてしまった。
奇行種らしからぬ変わり果てた姿にリヴァイはカオリナイトに対する怒りをおさえるのに必死だった。
「俺が、何も気づいていないなんて思うなよ。」
「え?えと…」
「その傷の事だ。もちろんハンジからも聞いている。少し考えるから待っていろ。とにかくお前は食堂の前に医務室だな。手当てしてもらったら、朝抜いた分昼飯はしっかり食えよ。」
「は、はい!」
ならさっさと行けと肩を押されたが、少し行った所で、再び声をかけられる。
「クレア、朝サボった分、今夜は俺の執務室で仕事だ。クソメガネにも言っておくから夕飯食ったら、俺の所に来いよ。」
「え…えと…」
「ちゃんと着替えとかも持ってこいよ。じゃあな。」
するとリヴァイはクレアの返事も待たずに行ってしまった。
「もう…兵長どうしちゃったの…?」
着替えももってこいのあたりで顔を赤くしてしまうが、今は怪我の手当が先だ。
クレアは大急ぎで医務室まで行き、昼食を済ませた。
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──エルヴィン執務室──
呼び出しをされていたリヴァイはノックをして中に入ると、既にハンジが、ソファに腰掛け焼き菓子を食べていた。
「あ、リヴァイ!きたきた!」
「待ってたよリヴァイ。」
「あぁ…遅れてすまなかったな」
リヴァイはハンジの隣に人一人分間をあけて腰掛けるが、食い散らかされたテーブルに苛立ちを覚えると更に距離を離し座り直した。
「2人を呼んだのは言うまでもない。クレアの事だ。お前達は気づいていたのか?」
エルヴィンはハンジによって持ち込まれたデイジーの鞍を見つめながら問いかけてきた。