第30章 奇行種、異変
「理想は、クレア自身で解決する事だ。実力差を見せつけるでもいい。力技で示すでもいい。言葉で言いくるめるでもいい。なんでもいいんだ。どんな理由であれクレアに手を出すのはマズイとなれば、今後の抑止力にもなりこんな馬鹿げた事は二度と無くなるはずだ。」
「でも、クレアがそんな事をできるとは思えない。」
「まぁ、アイツには難しい話だろうな。クレアも今は満身創痍だろう。俺がひとまず手助けをしてやらない事もないが、効果が確実かは五分五分だ。」
「何か策があるのか?」
エルヴィンは立ち上がり、リヴァイとハンジの向いのソファに座り直す。
「まぁな…」
「どんな策だ。」
「ハッ、こんな真っ昼間っから言えるかよ。とにかくカオリナイトに俺のことを諦めさせればいいんだろ?うまくいくかは五分五分だが、このまま指をくわえて見てるわけにもいかねぇ。実行させてもらうぞ。」
話は終わりだとリヴァイは立ち上がり、エルヴィンの執務室を出ていこうとするが、扉の前で足を止めると、言い忘れたとばかりにハンジの方を振り返った。
「おいクソメガネ。悪いが今夜は一晩クレアを借りるからな。許せよ。」
「えー!?リヴァイ!ちょっ…」
──バタン──
リヴァイは返事も待たずに出て行ってしまった。
「あーもー!いったい何をする気なんだよ…」
「まぁ…真っ昼間から言えない事をしようとしているのは確かだな。」
エルヴィンはフフッと半分諦めたような顔をしながら天井を見上げている。
それであらかた察しのついたハンジも釣られるように苦笑いをした。
策としては有りだが確かに成功率は五分五分だ。
「リヴァーイ……私の可愛い部下に、あんまりやりすぎないでくれよ。」
そう呟くとハンジもついつい天井を見上げてため息をついた。