第30章 奇行種、異変
「お前は確か……」
「……101期のカオリナイト・レビです。」
「そうか…ではもう一度聞くぞ。カオリナイト、ここで何をしている。」
「クレア・トートには調査兵団を志願退団してもらうつもりでいます。」
今にも沸騰しそうな程の怒りを感じる。
冗談を言っている訳ではなさそうだ。
「何故だ。その様子からすると、デイジーの鞍に細工をしたのもお前だな。兵団内で傷害事件を起こすなど言語道断だ。退団になるのはお前の方だぞ。」
すると、麻袋を握る手にグッと力が入りカオリナイトの顔が歪んだ。
「クレアは…兵長の何なんですか?!」
「お前には関係ないだろ。」
「では、なぜ3月の壁外調査では行方不明になったクレアの捜索にお一人で向かわれたのですか?もし…行方不明になった兵士がクレアじゃなかったら、もし、行方不明になった兵士が私だったら兵長は捜索に行きましたか?」
そういう事か……
リヴァイは心の中で舌打ちをした。
ここ数日の嫌がらせの類は、やはり女の嫉妬からくるものだった。この話だと、3月の壁外調査でリヴァイが単独でクレアの捜索にあたったのが、きっかけだったのだろう。
「その件に関しては答えるつもりはない。好きに想像しろ…」
「……どうしてですか?!」
今ここでクレアとの関係を話しても納得するとは到底思えない。
さて、どうするか…
「はぁ……そこまで知りたいなら教えてやらんでもないが…全てを知った後に文句は言うんじゃねぇぞ。」
カオリナイトは黙ったままリヴァイを見つめているが、その頭で何を考えてるのかまでは分からなかった。
「沈黙は肯定と解釈する。どうしても知りたきゃ今日の日付が変わる頃に俺の執務室にこい。別に気が変われば来なくてもいい。いいな、分かったならもう行け。」
その言葉を聞くと、カオリナイトは表情一つ変えずに走って行ってしまった。
タイミングがいいのか悪いのか、ちょうど女湯から出てくる人物が1人。
クレアだった。