第6章 調査兵団入団
掴まれた腕をズルズルと引かれ、気づくとクレアは背中を壁につけ、近い距離でリヴァイと向き合う体勢になっていた。
何が起こったのか理解できず、蒼い瞳を見開き、リヴァイを上目づかいに見つめる事しかできない。
「…お前がハンジの班で調査兵団に入れたのは、エルヴィンではなく俺のおかげだ。」
リヴァイは荷物を持っていない方の手で、クレアの顎を掴むと上を向かせ顔を近づけた。
すると、クレアの荷物からだろうか。ほのかに花のような香りがリヴァイの鼻を刺激した。
クレアは右手にコーヒー、左手は紙袋に包まれた香油を抱えているため、身動きがとれない。
いったいどういう事だ。
あろう事か、大きめのワンピースの襟ぐりが左の方にズルっとずれてしまい下着の紐があらわになってしまってる。
なんともいえない構図になってしまっていた。
「何か礼をしてもらうとするか…」
「……お、御礼ですか…………?」
「考えておく…お前も早く戻って支度しろ。遅れるぞ。」
そう言うとリヴァイは、顎を掴んでいた手を離し、クレアの女子棟とは反対側に歩いて言った。
長い廊下を歩きながら
リヴァイは盛大に溜め息をついた。
今日は執務も早く終わり、夕刻まで時間ができたため、街まで掃除道具を買いにでかけてたのだ。
まさかの帰り道、クレアに会うなど思ってもみなかった。
遠目から見えたクレアの姿はサイズの合っていないワンピースを着ていて襟ぐりも大きくあいている。
街は賑わってはいたが間もなく夕刻だ。治安も悪くなってくる。
あんな無防備な格好をして立っていたら、誰か声をかけてくれと言っているようなものだ。
時刻も時刻だったため連れて帰ったが、帰り道もリヴァイはずっとクレアの事を考えていた。
クレアはハンジ班だ。
幹部同士ならまだしも、末端の新兵など班が違えばそうそう会話をする機会もないだろう。
リヴァイはそれが惜しかった。
なぜだかはわからないが、なんとかハンジ班のクレアでも自分の側に置けるまっとうな理由が欲しかった。
兵舎に着くまでの短い時間、頭を捻りに捻った結果があれだった。
無理くりなこじつけだがとりあえずはこれでいい。
リヴァイも着替えをするため、自室へと急いだ。