第6章 調査兵団入団
「…………?!」
な、何を言っているの?
この人は私を知っているような口ぶりだけど、まったく私は知らない。
眉間に皺がより、目つきが悪いせいか、口も悪そうに見える。
片手には大き目の紙袋を抱えているが、柄のついているタワシやハタキなどが入っている。
この容姿に掃除用具か?
なんともミスマッチだ…
そして奇行種とは何だ?巨人の奇行種の事であろうか?
もう疑問符ばかりである。
身長は男にしては小柄で自分より少し高いが、圧迫されるような威圧感のせいで、より大きく見えた。
そこまで大きな身長差もないのに物凄く見下されている感覚だ。
「そろそろ、新兵歓迎会の時間だ。戻って着替えないと間に合わねぇぞ。さっさと来い…」
「……」
話の内容からすると、この人は調査兵団の兵士か?
確かにそろそろ兵舎に向かわないと間に合わないかもしれない。
クレアは仕方なくその男の後を追った。
「あ、あの、私は新兵のクレア・トートです。失礼ですが、調査兵団の方ですか?」
するとその男は、一旦足を止め、半分ほど顔を振り向き、切れ長の目から瞳だけをクレアに向けた。
「お前の事は知っている。俺の事は…リヴァイと言えばわかるか?」
リヴァイ………リヴァイ兵士長……
この壁の中の人間で、彼を知らない者はいないだろう。
子供だって知っている。
エルヴィンとおなじくカリスマ的な有名人だ。
人類最強という通り名まである。
クレアも勿論名前は知っていたが、今まで顔を見た事がなかったため、わからなかった。
「た、大変失礼を致しました!」
「まぁいい…。急ぐぞ。」
2人は無言で兵舎まで急いだ。
兵舎の玄関まで着くと、皆それぞれ戻って支度をしているのか、シンと静まり返っていた。
「リヴァイ兵長、先程は失礼を致しました。皆様の足手まといにならぬよう頑張りますので、どうぞ宜しくお願い致します。」
両手に荷物を持っていたため、敬礼はできなかったが、頭を下げて、失礼のないよう挨拶をした。
「それでは、戻って兵服に着替えますので、これで失礼いたしま……」
女子棟に戻ろうとしたところを、リヴァイに腕を掴まれ静止されてしまった。