第30章 奇行種、異変
──関わるな──
──退団しろ──
調査兵団に入るまでは根暗で人との関わりを避けてきたクレア。もちろんモテ好かれた事などなかったが、だからといって無慈悲に攻撃を受けることもなかった。
こんな嫌がらせに、攻撃的な言葉を浴びせられるのはまったくの初めてで、クレアはどうすることもできなかった。
いつもならとっくにリヴァイと一緒に仕事をしている時間だったが、自分が兵団組織を危険に晒す人間だと言われてしまえば、執務室に向かうことなど到底できなかった。
────────────────
時遡ること数十分前。
リヴァイはいつもの時間に執務室に来たつもりだったが、扉にはカギがかかっていてあかなかった。
中で物音がしない為、おそらく無人だろう。
不思議に思いながらも自分のカギを使い扉をあけるが、やはり室内には誰もいなかった。
シンと静まり返っている執務室。
「クレア…?まだ来てねぇのか?」
いつもは自分が扉をあけると同時にクレアの笑顔が出迎え、紅茶を用意してくれる。そのためこの状況はなんだか違和感を感じてしまう。
今日はどうしたのだろうか。
寝坊でもしてるのだろうか。
とりあえずリヴァイは今日もこなさなくてはならない仕事に手をつけながらクレアがやってくるのを待った。
しかし待っても待ってもクレアはやってこない。
「……おかしいな。」
この所のクレアはらしくもなく転んで手に足に擦り傷を作っていた、それに不自然に割れた窓ガラスで顔を切った件もリヴァイは不可解だと思っていた。
決して自惚れる訳ではないが、クレアと付き合う様になってからも、女兵士から言いよられる事は何度もあった。
もちろんリヴァイからクレアの事を教えること等していなかったが、どこかから漏れたのだろうか。
考えたくはないが、何かがきっかけで、女のくだらない妬みや嫉妬にクレアは巻き込まれてしまったのだろうか?
そう推理すると、今朝ここに来ることが出来なかったのも、クレアの身体についた傷と何か関係がありそうだ。
「クソッ…」
リヴァイはいてもたっても居られなくなってしまい、仕事を中断すると、クレアを探しに執務室を後にした。