第30章 奇行種、異変
「こ、こんな…攻撃的な…事をされては…答えられません…」
思い切り締め上げられ踵が数センチ浮いた。
きっとカオリナイトはクレアがリヴァイと帰還したことを知っていて、よく思ってなかったに違いない。実際に伝令もまわっていたし、箝口令も出ていなかったため、あの日リヴァイと帰還したことを知るものは少なからずいるだろう。
実際カオリナイトもあの時門番をしていた駐屯兵に聞いた可能性だってある。
「あんたは、いったい兵長のなんなのよ!」
より一層殺気立った目で睨みつけられる。
核心をつくような質問をぶつけられるが、勿論これにも答えることはできない。
「な…なんでもありません…ただの…末端兵です。」
こんな2人の関係を否定する様な台詞、リヴァイが聞いたら怒るだろうか?しかし、この状況ではこう答えるしか選択肢が浮かばなかった。
「…分かったわよ。どうしても言うつもり無いのね。でも、これだけは覚えておきなさいよ。あんたがどうリヴァイ兵長にとりいってるのかは知らないけど、それが兵団の規律を乱すだけではなく、あんたのせいで兵長自身の身に何かが起こればこの調査兵団の存続自体危うくなるってことをね!」
「!!!」
「理解できたなら今後リヴァイ兵長には関わらないで!退団してくれても構わないわ!」
そこまで言うと、2人は倉庫を出て行った。
「…………」
──調査兵団の存続──
リヴァイを好きでいることは、そんなに大きな危険を孕んでいるのか?
カオリナイトの辛辣な言葉は、頭を鈍器で殴られたような衝撃で、クレアは2人が出ていった薄暗い倉庫の床にヘナヘナと座り込んでしまった。
特に恋愛を禁止されていない兵団内でもやはりリヴァイは例外なのだろうか?
リヴァイを好きでいることは、好き合っていることは、この調査兵団の危険因子でしかないのだろうか?
カオリナイトに言われたことが何度も頭の中でリフレインしてしまい、クレアは座り込んだまま動けなくなってしまった。