第30章 奇行種、異変
「…………………。」
「これで、リリアンが見たっていう人物がやったって事で間違い無さそうね。」
「う、うん…でも何で…私…わかんないよ…」
クレアにはこんな事をされる動機に見当がつかなかった。
しかし、フレイアからしてみれば、今までクレアに対して嫌がらせの類がなかったことの方が不思議だと思っていた。
この容姿に幹部や団長からも注目を浴びる程の戦績。
それにどこまでの兵士が知っているのかは不明だが、クレアは早朝にリヴァイの執務室まで出向き仕事の手伝いをしているのだ。
男女問わず色んな方面からモテるリヴァイの事、クレアが妬みや嫉妬の対象にならない方がおかしい。
おそらくは今まで我慢に我慢を重ねたが新兵入団でまたもクレアが注目の的となり面白くなくなったのだろうか。
フレイアはそう踏んでいたが自分に妬みや嫉妬の感情が向けられてるなど、鈍感なクレアは微塵も思っていないだろう。
今ここで教えてやるべきか悩んだが、新兵リリアンがまさかの地雷を踏んでくれた。
「あの!気になってたんですけど、クレアさんって兵長と付き合ってるんですか?」
リリアンはなんの遠慮もなしに笑顔を見せながら無邪気に聞いてきた。
「え?えぇ?!」
「だって!だって!私達がクレアさん捕まえると、決まって兵長が怒りながら連れて行ってしまうし、新兵達の間でもちょっとした噂になっているんですよ?」
「そ、そうなの?!」
いきなりの質問に言葉を失ってしまう。
「もしそうなら、この嫌がらせって、リヴァイ兵長に片想いしてる人なんじゃないかと思ったのですが…ハズレですか?」
「え……えと…」
スッと笑顔は消え、リリアンの聡明な視線がクレアにつき刺さる。
「クレア。ごめん、私もリリアンと同意見。嫌でなければ教えてあげて。」
「フレイア?」
確かに、確かにリヴァイはモテる。
今までに2度ほどリヴァイにせまる女兵士を実際に見たが、きっと恋人同士になってからもリヴァイはそういった場面に何度も遭遇しているはずだ。
そう、たまたま自分がそこにいなかっただけで、付き合い始めてからもきっとそういう事が何度もあっただろう。