第30章 奇行種、異変
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──その日の夕刻──
「ぎゃーー!!しし、し、しみるよー!」
「クレア?!やだちょっと…大丈夫?」
訓練を終え、風呂にやってきたクレアとフレイアだが、クレアは擦り傷だらけになった手足にシャワーがかかると、悲鳴を上げた。
医師から薬は塗ってもらってはいたが、何度も擦り付けてできた生傷にはシャワーの湯でさえもビリビリとしみ痛んだ。
歯を食いしばるが心臓が脈打つのに連動する様にズキンズキンと手足が痛む。
「ほらもう!前向いて。私がやってあげるから!」
フレイアはここ最近エスカレートしていく嫌がらせを目の当たりにしていた為、ため息をつきながら石鹸を手に取った。
「フ、フレイア……」
少し涙目になりながら振り返り自身を見つめるクレアの顔は、年の離れた自分の妹よりも幼く見え、なんとかしてやらなければと、フレイアの中の姉魂にスイッチが入てしまう。
クレアはこれでも自分より年上だというのだから本当に驚きだ。
「手が痛いんじゃ何もできないじゃない!夕飯の後、洗濯もやってあげるからそれまでにまとめておいてね!」
バスタオルや着替えを濡らされる嫌がらせも、不定期だが継続中だ。その上謎の転倒を繰り返せば自然と洗濯物も増える。
しかし、擦り傷に擦り傷を重ねた痛々しい手ではとても満足に洗濯などできそうにない。
クレアはフレイアに甘えるしかなかった。
「ごめん…フレイア。」
「私は別にいいけど…もういい加減に報告したら?こんなの絶対におかしいって!!」
「うん…それは分かってる。」
確かにやっぱりおかしい。
嫌がらせは収まるどころかエスカレートをしていくし、このまま自分だけではなくフレイアに火の粉が飛んでもまずい。
クレアはハンジとリヴァイに話をしようとしたのだが、どのように話をすればよいのか悩みどころだ。
あまり大事にはしたくないのだか、あの2人の事だ。
もしまかり間違って暴走されたらまずい。
クレアは報告の仕方も少し考えねばと頭を悩ませた。