第30章 奇行種、異変
「でもフレイア…しばらくお風呂は私と一緒に入ってほしい…1人で入っている時にやられたら困る!」
クレアは両手を合わせてお願いをした。
「それは構わないけど…」
そんな風に言われてしまえば断れるはずもない。
フレイアは押し切られる様に答えてしまった。
フレイアからは心配そうに見つめられてしまうが、クレアとて今の状況だけではどうする事もできない。証拠も目的もまったく手がかりなしなのだ。
ただ静観するだけとは言わないが、クレアはもう少し様子を見たかった。嫌がらせをされたとて所詮タオルを濡らされただけだ。この程度で困る自分をどこかで見て満足し、収まるのならそれでいい。
ハンジに報告をするにしても、もう少し情報がまとまってからでも十分だろう。
しかし、事態はクレアの思うようには向いてくれなかった…
数日後、クレアは2つ目の異変に襲われることとなる。
ある日の昼食時、混雑している食堂で熱いスープが飛んできて手の甲を軽く火傷をした。
ちょうど昼休みに入ったばっかりだった為、ぶつかった誰かのスープが運悪くかかったのだろうとその時は思った。
しかし、その翌日、訓練が終わって、外の水道で軽く顔を洗おうと思った時だった。
突然2階の窓ガラスが割れて、クレアは降り注いだガラスの破片で頬を切ってしまった。
突然窓ガラスが割れるなど、ハンジもリヴァイも怪訝な顔をしていたが、クレアは特に人影を見たわけではなかった為、この破損の原因は、建物の老朽化という事にせざるをえなかった。
更には、朝礼のある朝に限って何故か整列前に転んでしまう。誰かに足をかけられている感じがしないこともなかったが、勿論証拠もない為何も言えない。
気づけば頬に両手に両膝に傷だらけになってしまっていた。
「キャッ!!先生!しみる!」
「ハハ、ごめんよ。」
医務室の医師がクレアの膝と手のひらにできた擦り傷に消毒液を塗りながら笑った。
「それにしても普段訓練では怪我をしないクレア君が珍しいね。この所は常連さんだ」
「はい…最近は運から見放されています…」
運?
これは運などではないと、鈍感なクレアでも気づき始めていたが、医師に余計な心配は無用と、冗談で返した。