第30章 奇行種、異変
新兵とリヴァイの攻防戦は1週間程続いた。
さすがにそこまでくるとようやく新兵達も諦めがついたのか、クレアを囲い込んでの質問攻めはおとなしく無くなっていった。
だがちょうどそのあたりからだろうか…
クレアがまず1つ目の「異変」に気がついたのは。
それはクレアがフレイヤと風呂に入った後の事だった。
「あれ?なにこれ…?」
「ん?どうしたの?」
クレアはカゴに入れておいたバスタオルを手に取るとなんだか湿っている。
「え?なにこれ…誰かが間違って使ったのかなぁ?それにしても気持ち悪いね…」
「う、うん……」
両手で触り匂いも嗅いでみるが特に変な匂いはしない。単純に湿っているだけの様だ。
「とりあえず今日は私の使ってよ。誰が使ったか分からないのよりはマシでしょ?」
そう言うと、フレイヤはササッと自分の身体を拭くと、そのバスタオルをクレアにかしてやった。
「あ、ありがとう!!助かる!」
クレアは風呂と食事を済ませると洗濯をしてからハンジの執務室に向かった。
──しかし翌日──
「あれ?!また…?」
翌日の入浴後もバスタオルが濡れていた。今回はビショビショに濡れていて脱衣所の床に落ちている。
「なにこれ…まさかこれって、クレアに嫌がらせしてるんじゃない?」
「え?嫌がらせ?私に?」
「私もよく分からないけど、2日も連続でこんな事おかしいよ。」
「うん…でも何で…」
その日もフレイヤにタオルを借りてしのいだのだが、それからも風呂での不可解な事件は不定期に続いた。
時には用意していた着替えや下着にまで水をかけられてしまい、フレイヤに部屋まで取りに行ってもらう事もあった。
それらは決まって大浴場が空いてる時に起こる。
やはり目撃者を作らないように段取りを組まれた嫌がらせなのだろうか。
クレアは初めての事で戸惑っていたが、何の確証も無いまま自身への嫌がらせと決めつけるのもなんだか被害者面をする様でいやだった。
「ねぇ、ハンジさんか兵長に言わなくていいの?」
「う〜ん…まだ何も分からない事だらけだし…」
フレイヤは友人に向けられた嫌がらせを心配し、上官への報告を勧めたが、もう少し様子を見ると言われてしまう。