第30章 奇行種、異変
リヴァイは確かに自分に対しての独占欲が強い。今までも自分以外の男に対しての立ち振る舞いなどを厳しく言われたことが何度もあった。
しかしそれはどちらかと言うと威圧的に「指導」されるような感じだ。
なんだか今のリヴァイは構って欲しいのに構ってもらえなくて拗ねている仔犬の様に思えてしまい、反射的にクレアの母性本能なるものがくすぐられてしまったようだ。
「兵長…失礼を承知で伺いますが…今、新兵の子達にヤキモチ妬いて、拗ねちゃってます…よね?」
「…なんだよ…悪いかよ……」
クレアの言葉に図星をつかれたのかリヴァイは視線だけを横にそらした。
気まずそうに視線を逸らす仕草にも胸を打たれてしまい、思わず年上のリヴァイに対して「可愛い」などと言いたくなってしまったが、すんでの所で止めた。
「いえ…そんな事はございません…でも…」
「なんだよ…」
「なんだか、こんな私に対してそんな風に思って貰えるのが嬉しくて。兵長の想いに胸がキュンとなってしまいました。」
「はぁ……いくつ年が離れてると思ってるんだ。俺はいつでも心配だ。特にあの思春期真っ只中の底無し野郎は本当にやっかいだからな。気をつけろよ。」
「兵長も色んな意味で底無しだと思うのですが…彼らはそれより上をいくんですか?」
「あぁ?!そんな訳ねぇだろ!」
「なら、いいじゃないですか。私はいつだって、いつまでだって兵長だけですから。」
いつもなら恥ずかしくて言えないような台詞だが、拗ねた仔犬をなだめる様な気分になると、自然と口から出てしまっていた。
「嘘をつくんじゃねぇよ。お前の頭の中にはいつだってあのクソメガネがいるだろうが。」
「ふふふ、そうでしたね。でも兵長の一喝もありましたし、明日からはだいぶおとなしくなると思いますが。」
「だといいがな。」
拗ねていたリヴァイの気持ちが少し落ち着くと、再び深い口付けをし、お互いの想いを確かめ合う。
リヴァイはこのままここで抱いてしまおうかとクレアの兵服のシャツに手をかけたが、タイミング悪く扉をノックする音が執務室に響いた。
「!!!」
クレアは慌てて起き上がり、乱れたジャケットと髪を急いで整えてソファに座り直した。
入室してきたのはエルドだった。