第30章 奇行種、異変
──バタンッ──
なかば引きづられる様に兵舎内に戻ってきたクレアは、リヴァイの執務室まで連れてこられると、少し乱暴にソファへ放り投げられた。
当の本人は相変わらず不機嫌な表情でジャケットを脱ぐとハンガーに掛けこちらに向ってくる。
「キャッ!!もう!兵長、いったいどうしたん……んん……!!」
尻もちをつくように座りこんでしまった身体を起こそうとするが、間髪入れずにリヴァイの唇が降ってきた。
いきなりの事に抵抗したかったが、何度も角度を変え口内の弱い所を攻められてしまえば徐々に甘い痺れが全身をめぐり力も抜けてきてしまう。
「ふぅ……んん……」
必死にリヴァイの肩ベルトにしがみついていたが、口内への執拗なまでの愛撫と、のしかかるリヴァイの身体に耐えかねてクレアはそのまま後ろにドサリと倒れてしまった。
「はぁ……あぁ……へ、兵長…?」
「お前は、毎日新兵に構いすぎだ……」
「え?」
「あんな馬鹿げた質問、適当にあしらってさっさと兵舎に戻ってこいよ。」
馬鹿げた質問?リヴァイはいきなり何を言い出すのだ?クレアはポカンとリヴァイを見つめ返してしまう。
「そんな…兵長…馬鹿げた質問だなんて…みんな真剣な表情でしたよ?」
「あ?お前の目は節穴か奇行種。真剣な面をしてたのは、訓練に対してではなくお前個人にだ。特にあのアンドレって奴は、よっぽどお前と仲良くなりてぇみたいだな。下心丸見えで反吐が出そうだった。」
「そ、そんなぁ……」
クレアは自分の班に新兵が配属されなかった事もあり、自分なりにできる事はしてあげようと思ったまでだったのだ。
「なぁクレア…あんなガキ共と仲良くするなよ。」
リヴァイは少し不貞腐れるように吐き捨てた。
「え?」
……不機嫌な態度を取られているのにも関わらず、何故だがクレアは胸をキュンとさせてしまう。
あれ?
なにこのキュンとした感じ…
まさか、まさかとは思うけど…
兵長はヤキモチを妬いて拗ねているのだろうか。