第29章 103期入団とハンジ班の奇行種
「あ、あの……では、私はこれからもずっと兵長の執務室に通っても問題はないんですね!?」
「あぁ?!問題なんてある訳ないだろう!」
「すみません…ちょっと確認したかっただけなんです。でも兵長、いきなり無期限に変更なんて…それって職権乱用ですよ。」
クレアは子供の様に足をバタバタさせると、はにかむように笑った。
「なんだよ、その割には嬉しそうな面だな。」
「う、嬉しいに決まってるじゃないですか……朝の仕事の期限が無期限に変更されれば、兵長がこの仕事を他の誰かに任せる事も無期限にないという事なのですから。」
「あ?そんなことはしないと前にも言ったはずだが。」
もちろんリヴァイがもう来るなと言わない事なんて分かっていたが、自分が変わらず必要なのだと、クレアは珍しくもリヴァイの口から直接聞いてみたくなったのだ。
そんな分かりきったことをリヴァイに言わせたくなるなど、やはり今の自分は少し酔っているのだろうか。
しかし、朝の僅かな間でも、2人きりですごせるのはとても貴重な時間だ。
それが自分が生きてる限り自分だけのものなのだと改めて実感できたのだ。
リヴァイの言葉に十分満足したクレアは、安心する様な、少しくすぐったい様な気持ちになった。
「そうでしたよね。すみません。」
────────────────
穏やかな気持ちで星空を眺めて暫くがたった。
そろそろ仕事に戻らなければハンジも心配するだろう。クレアはリヴァイの肩に寄りかからせていた頭を上げた。
「なんだよ、もうクソメガネの所に行くのか?」
「へっ?!」
今言おうと思っていた事を先に言われてしまい、変な声がでてしまう。
「は、はい。」
「はぁ……ハンジ班の奇行種はあいかわらず仕事熱心なこったな。」
「え?」
リヴァイは少し名残惜しそうに小さくため息をついた。
「あのクソメガネの班で音を上げずにしぶとく生き残ってるのはモブリットとお前くらいなもんだぞ。」
「……そうなんですか?音を上げるとか、しぶとくとか、いまいちピンとこないのですが…」
「ハッ、それがたいした奇行種ってことだ。」