第29章 103期入団とハンジ班の奇行種
以前モブリットから、ハンジ班はきついからと異動願をだす兵士もいたと聞いていた。
それに今朝はフレイヤも絶対にハンジの班は無理だと言っていたし、あのハンジ自身も自分の班には志願してくる者しか入れられないと言っていた。
しかしクレアは1年やってこれたからといって、自分ではたいしたことだなんてこれっぽちも思っていなかった。
「なんだよ、これでも一応褒めてるつもりだ。お前は良くやっている。これからも頑張れよ。」
ポカンとしていたクレアにリヴァイは思っていた事を素直に言ってやった。
「あのクソメガネには毎度毎度迷惑を被ってるが、お前が楽しそうにアイツの元で仕事をする姿を見るのは悪くないからな…」
「兵長……」
「これでもちゃんと応援してるつもりだ。」
「ありがとうございます、嬉しいです…」
リヴァイから褒められ応援されるなど、自分はなんて幸せ者なのだ。
クレアは思わず目頭を熱くさせてしまう。
2人は立ち上がると階段を昇り旧舎に戻った。
「ほら、もう行け」
「は、はい!」
しかし、行けと言っておきながらリヴァイは何かを思い出したのか、走り出したクレアの腕を掴む。
「兵長?」
「クソメガネに伝言だ…もう二度と虫の類を兵舎に持ち込むな。またやりやがったらその足削ぐぞと言っておけ。」
そのまま掴んだ腕を引き寄せキスをすると、ハンジの執務室に向かう様解放してやった。
「わ、わかりました…必ず申し伝えます。」
クレアは苦笑いで敬礼をすると走っていってしまった。
「はぁ……」
今朝は朝から気持ちの悪い幼虫を拝まされた挙げ句、クレアの飲酒量に肝を冷やし、厭らしい視線を送る男新兵に目を光らせるなど、ドタバタと散々な1日だったが、明日からの訓練は新兵も加わりより一層忙しくなるのだ。
リヴァイはもう仕事をする気にはなれず、クレアには悪いが先に自室に戻って寝ることにした。
こうして春風が心地よく香る今春も、30名程の訓練兵が103期調査兵として無事に新兵歓迎会を終えることができた。