第29章 103期入団とハンジ班の奇行種
「言いてぇ事は分かるが…だからと言ってまた行方不明になるのは御免だぞ。まぁ、壁外でヤッたのは悪くなかったけどな。」
「……!!そ、その話はもうやめてください!!」
あの時の森での事を思い出すと、再び頬が熱を上げてしまう。これではいつまでたっても仕事に戻れない。
「なんだよ、あんなに善がってたじゃねぇか。まぁいい。とにかくもう俺の前からいなくなったりするなよ。」
すると、リヴァイはクレアの髪を取り口付けると、キンモクセイの香りを吸いこんだ。
「例えいなくなったとしても、何度だって必ず見つけ出すつもりではいるけどな。」
「兵長……」
何度だって必ず……
その強い想いが込められた言葉にクレアは素直に喜ぶ事しかできなかった。
「あ、ありがとうございます…次の壁外調査も死なないように死ぬ気で頑張ります。」
「あぁ…頼んだぞ。」
リヴァイが肩を抱き寄せ、しばらく2人で夜空を見上げていると、何かを思い出したかのようにクレアが口を開いた。
「そういえば兵長…1つ伺っても宜しいですか?」
「なんだ?」
「兵長に朝の掃除を命じられてからちょうど1年がたちました。あの時兵長は、期間は気が済むまでと仰ってましたが……もうお気は済まれましたか?」
少し不安げな表情でクレアは問いかけてきた。
「!?」
そんな事…よく覚えていたなとリヴァイは思う。あの時は自分の気持ちの正体に気づかず、とりあえずクレアを引き止める正当な理由が欲しかったのだ。
しかし今やクレアは自分の恋人だ。
クレアの質問に答えるのなら、もう気は済んだと言うのがしっくりくるだろう。
しかし今は別の理由が存在する。
「…気は済んだかもしれないが、辞めさせるつもりはないぞ。」
「え?!」
「もう俺はお前の淹れた紅茶を飲みながら、お前の隣で仕事をする事に慣れてしまってるからな。そうだな、期限は無期限に変更だな。」
「………!!」
「クレアのいない朝の執務室なんかもう考えられない。そういうお前はどうなんだ?」
リヴァイは少し眉間にシワを寄せてクレアの顔を覗き込んだ。