第29章 103期入団とハンジ班の奇行種
「あ、あの…兵長?いったいどうされましたか?」
リヴァイはクレアの質問に答えずに、カンカンと階段を2,3段降りると腰掛け、隣に座るよう視線を向けた。
クレアはすぐにリヴァイの左側に座り顔を見上げると、少し強引に顎を掴まれる。
あと少しで唇が触れてしまいそうな距離まで顎を引かれてしまうと、クレアは無言のままのリヴァイに対して何か怒られるのかと不安な気持ちが込み上げてきてしまう。
「あ、あの…兵長?」
「俺以外の男の前で酒は飲むなと言っただろうが?しかも、だいぶ飲んでたな?」
「えぇ?た、確かに以前ハンジさんの誕生日の時に同じ失敗はするなとは言われましたが……それってそういう意味だったんですか?」
「そういう意味も含んでいた。」
「…………」
ここでやっとクレアは理解した。
歓迎会の最中に感じていた痛いほどのリヴァイの視線の意味を……
遠く離れた席からでも、リヴァイはクレアの飲酒量を抜かりなくチェックしていたのだ。
「そんなの…分かりづらいですよ兵長。それに、もうあんな失敗はしでかしませんので、そんなに心配しないで下さい!」
「…お前は酔うと、普段じゃ考えられないくらい陽気になるからな…心配に決まってるだろ。」
そこまで言うと、痺れを切らしたかのようにクレアの唇はリヴァイによって塞がれてしまう。
リヴァイは口内に残ったアルコールを全て舐め取るかのように深く深く口付ける。
クレアの息が苦しくなったところでようやく解放してやると、月明かりに照らされた頬が少し赤くなっていた。
「新兵の奴らがさっそくお前の事をジロジロと見ていた。だから俺以外の男がいる場所で無防備に酒なんか飲むんじゃねぇ。」
「そ、それは単にこの小さな容姿が珍しかっただけなのでは?」
「いいや、違う。あれは完璧にお前をヤラシイ目で見ていた。間違いねぇ。ったく、クレアを妄想して抜きやがったら夢の中だろうと削ぎに行ってやるからな。」
リヴァイの表情は至って大真面目だった。
「そ、そんなことありませんって…それにせっかく調査兵団に入団してくれたんです。例え夢の中であろうと兵長が削ぎに行ったら二度と目覚めなくなりそうなので、やめてくださいね……」