第29章 103期入団とハンジ班の奇行種
クレアはハンジの散らかしグセや徹夜など、甘やかす所は甘やかすが、不潔にしていたり、まわりの人間が被害を被るような事にはきちんと意見を言いストップさせている。
クレアの入団当時の印象を考えると、意外にも飴と鞭のさじ加減が絶妙であったのだ。
そんな常識も兼ね揃えたクレアが1年間調査兵として生き残り、今日新たな新兵を迎える日がきたのだ。
そう思うと、モブリットは急に感慨深くなってしまった。
すると、クレアは麻袋を畳みながら、モブリットがちょうど今心の中で考えていた話題を口にし始めた。
「そういえばハンジさん。私達の班には新兵って入らないんですか?」
「うん。残念ながら入らない…」
ハンジは苦笑いをしながらポリポリと頬を掻いてみせる。
「何もお話が無かったので、そうだろうと思ってましたが…ちょっと寂しいです。」
「まぁうちの班はリヴァイ班とはまた違った意味で特殊だからね。クレアみたいに志願してくる兵士でないと続かないんだよ…」
「まぁ…そうでしょうね…」
「なんだよ〜クレアはそんなに新兵入れたかったの?」
「い、いえ!決してそういう訳では!」
この1年振り返ると過酷な労働環境だったが、それが苦にならなかったのも全ては敬愛するハンジのためだからだ。
そんな覚悟のない者が配属されても続かないのは一目瞭然だ。少し寂しい感じもしたが、自分には敬愛するハンジと、同じくハンジを敬愛してやまないモブリットがいれば十分だった。
「だよね!だよね!私はクレアの愛がないと生きて行けん!!あぁ…でもこれも今やリヴァイのものかぁ……くーーーー!!」
ハンジはクレアを感極まり目茶苦茶に抱きしめた。
「わっ!わっ!ハンジさん!」
「分隊長、クレア、そろそろこちらも準備をしないと新兵が到着してしまいます。急ぎましょう。」
慌てるクレアにすかさずモブリットが助け船をだした。
こんな時のクレアとモブリットの息も今では阿吽の呼吸だ。
「私達は、部屋割と、厩舎の最終チェックでしたよね!ほらハンジさん急ぎましょう!」
3人は新兵を受け入れるべく、最終チェックにむかった。