第29章 103期入団とハンジ班の奇行種
「モブリット、クレア、この研究結果はちゃんと評価をするつもりでいるから安心しなさい。報告書もゆっくり読みたいのだが、まもなく新兵が到着する時間だ。後程ゆっくり読ませてもらう。なのでそちらも引き取って準備に取り掛かってくれ。」
「「は、はい!!」」
敬礼をすると、モブリットはいまだにのたうちまわっているハンジを引きずり、クレアは幼虫の入った麻袋とホウキを持ってエルヴィンの執務室を後にした。
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「もう!ハンジさん!だから持ってくのはやめましょうって言ったんです!」
「アハハハ!エルヴィンもリヴァイも男のくせにこれしきの事で情けないなぁ!」
3人は麻袋に入れた幼虫達を逃がすために兵舎裏まで来ていた。
「分隊長…さすがにあれは男女云々は関係ないかと…」
「あぁいうのはね!!インパクトが大事なんだよモブリット!あれでエルヴィンも真面目に報告書を読む気になったでしょ!?」
「………」
エルヴィンは最初からハンジの報告書に対して興味深い反応をしていた様にクレアは感じていたのだが……まぁ今更考えても遅いだろう。
「確かにインパクトも大事ですが…今後は幼虫や虫の類を執務室に持ち込むのはおやめくださいね!団長を困らせても大変ですし、兵長怒らせると怖いし、ハンジさんの執務室に虫がわいても恐ろしいです…本当にお願いしますよ…」
「なんだよー…クレアもケチだなー。」
ハンジはブーブーと口を尖らせて最後の1匹を解放してやった。
「…………。」
この2人のやり取りを見ながらふとモブリットは1年前の事を思い出す。
クレアはハンジの暴走講義に一目惚れをし、自力で特例を認めさせてハンジ班に入った特殊な調査兵だった。
昨年の新兵歓迎会ではクレアのハンジに対する崇拝っぷりに、今後は自分が2人分のブレーキ役をこなさなくてはならないのかと、一瞬げっそりとしたが、よくよくこの1年思い返すと、意外とそうでもなかった事に気づく。