第6章 調査兵団入団
着の身着のまま調査兵団へ入団したクレアはほとんど私服を持っていない。
たまに訓練兵団に支給された服の中から適当に選んだ物を、ずっと大事に着ていた。
いつも小さめの物を選んではいたが、それでもクレアにはいくらか大きい。
今着替えている薄いピンクのワンピースも、袖を折らなければ長く、丈も膝下になってしまう。
まるで、姉のお下がりを無理やり着せられてる妹のようだ。
少し不格好だが仕方がない。
自分にあった私服は調査兵団の給金がでたら買えばいい。小さなショルダーバッグに財布を入れ、ショートブーツに履きかえると、街に向かって歩き出した。
気候の良い晴れた午後だ。
街はとても賑わっていた。
家族連れやカップルなんかがほとんどだ。
クレアは1人で、雑貨屋、骨董品屋、アクセサリー屋、色々とウィンドーショッピングをしてみたが、なかなかピンとくる物がなかった。
ずいぶんと歩き、商店街の外れ辺りまできたところで一軒のお店が目に入った。
店の窓からはキレイなガラス細工の瓶がところ狭しと並べられている。
外からでは何の店かわからなかったため、思い切って中に入ってみた。
──カランコローン──
「いらっしゃーい」
店の中に入ると、ふんわりといい香りがした。
そう、ここは「香油屋」だった。
店の奥から年配の夫婦がでてきてクレア声をかけた。
「いらっしゃい、見ない顔だね?」
「あ、お邪魔いたします、私、今日から調査兵団に入団した者です。夕刻まで自由時間なので出歩いていたのですが、キレイなガラス細工が気になって…」
「そうかい、ありがとう。若いのに調査兵とは……勇敢だね。ウチは香油の質も自慢だが、ガラス細工の小瓶も売りなんだ!どれも細かい細工がしてあってキレイだろ?!店に並んでる物は全て見本だから自由に香りを楽しんでおくれ。」
調査兵団は税の無駄使いとののしる者もいるが、この店の夫婦はそうではないようで、クレアは少しホッとした。
とてもキレイなガラス細工は窓から入る日の光に反射してキラキラと輝いている。
値段もそこそこする。自分への記念品にするにはうってつけだ。
クレアはこの店で買おうと思い、色々と香りを試し始めた。