第6章 調査兵団入団
なのに現れたのは、こじんまりとした小柄な人形の様な少女だった。
この少女がリヴァイの言っていた「死ぬようなやつではない」と同一人物なのか一瞬疑ってしまったほどだ。
リヴァイが珍しく認めた兵士だ。最初はどんな女か見たいだけだった。だが、あまりにも予想外だったため、エルヴィンは少し興味を持ってしまった。
少し話をしてみたが、あまり喜怒哀楽を表に出さない性格に見えた。いや、出さない、出せないのかは不明だが……
しかし、ハンジの話になったら微かにゆるく微笑んだように見えた。
その笑みは当然自分に向けられたものではない。
それが妙にもどかしく感じたのは何故だろうか。
何かクレアの気をひけるものはないか…今度は茶菓子でも用意をしておこうかと考えた。
リヴァイ同様エルヴィンもたいへんモテる。いつも夜会などに出れば、自分の気をひこうとする婦人たちに囲まれてしまうため、自分から誰かの気をひこうなどと考えるなんて初めての事だった。
これはこれで面白い…と、2組のカップを洗い、棚に戻すと、エルヴィンは執務に戻った。
一方クレアは、兵服を抱え、自室に向かっていた。
エルヴィンは調査兵団の団長なのだ。
見た目は良いが、もっと近寄りがたいような、少し怖いようイメージを持っていたが、実際はそうではなく、とてもきさくな人だった。
「はぁ…緊張したぁ…と、とにかく早く荷物を片付けないと…」
クレアは女子棟の12号室へと急いだ。
ノックをして入ってみたが同室の者はいなかった。
ベッドや机に荷物が置いてあったため、外出をしているのだろう。
クレアも少ないが、持ってきた荷物をクローゼットや机の引き出しに入れていく。
新兵歓迎会の時間までまだだいぶある。
時間までに戻れば外出も許可されていた。
「どうしよう、買い物にでも行こうかしら。」
クレアは訓練兵時代の給金をほとんど使っていなかったため、少しまとまった金額が財布に入っている。
今日は記念すべき調査兵団入団の日なのだ。
何か自分のために買ってみようと思い、支度を始めた。