第28章 リヴァイの約束
ハンジはやはり捕獲作戦を実行したいとエルヴィンに掴みかかるように訴えたが、今の調査兵団にはその予算も人員も割ける余裕がない。
しかし、エルヴィンとて巨人の謎の究明を放ったらかしにしていいとも思ってはいない様だ。
「ハンジ、巨人の生体についての究明をおろそかにするつもりはないが、すぐに捕獲作戦は難しい。今はウォールマリア奪還までのルートを完成させるので手一杯だ…」
「………分かったよ…」
ハンジの顔はまるで苦虫を噛み潰したような表情だ。
「話は以上だ。クレア、リヴァイ、この手帳は私が預からせてもらうが、構わないか?」
「はい。」
「見つけたのはクレアだ。クレアがいいと言うなら俺はそれでいい。」
「そうか、わかった。」
話が終わり、4人が退室しようとした時、エルヴィンが小さな声で呟いた。
「これはただの私の独り言だが…クレアがハンジ班で、クレアがリヴァイの恋人で…本当に良かったと思っているよ……」
…でなければ、クレアは確実に死んでいた。
クルッと椅子をまわし背中を向けてしまったためその表情までは確認できなかったが、少なくともクレア以外の3人は、エルヴィンの言わんとしていることが痛い程十分に理解できた。
「…………??」
「ハハハッ!!ずいぶんと大きな独り言だね!」
ハンジはニカッと笑いながら後ろ手を振り、ドアノブに手をかけた。
「あ、あの…団長……」
「クレア…行くぞ…」
「…あっ……」
クレアはエルヴィンの言ってる事の意味がわからなかったが、リヴァイから手を引かれてしまえば仕方がない。
4人はエルヴィンの執務室を後にした。
──バタン──
「あ、あの!ハンジさん、兵長、モブリットさん…この度は私のために、こんな処分を受ける事になってしまい本当にすみませんでした!!」
クレアは執務室を出るやいなや3人に向かって深々と頭を下げた。
エルヴィンの最後の言葉はよく分からなかったが、今はとにかく迷惑をかけてしまったこの3人に謝罪をしなくてはという想いでいっぱいだった。