第28章 リヴァイの約束
兵舎に到着すると、じゃあ行こうとばかりにハンジはクレアの手をとり意気揚々と歩き出す。
リヴァイもクレアもまずは帰還の報告をしなくてはならない為、馬をエルドに任せるとハンジ達と4人でエルヴィンの執務室に向かった。
エルヴィンの執務室に入ると、早朝にも関わらず彼は机に座り、書類仕事をしていた。
しかし、その表情からかすかに疲労の色がみられる。
もしかしなくても、昨夜から寝ずに2人の帰還を待っていたのだろうか…
「エルヴィンお待たせ!!私の言った通り、ちゃんと戻ってきたでしょ?!」
ハンジはお叱りがあるのは十分承知の上であるというのに、腰に手を当てドヤ顔全開でエルヴィンに声をかける。
「団長……ご迷惑おかけしましたが、リヴァイ兵長の捜索により、只今無事に帰還することができました。」
クレアは敬礼をしながら帰還報告をした。
「エルヴィン、帰還が遅くなって悪かったな。」
リヴァイはいつも通りぶっきらぼうな口調で報告をする。
すると、エルヴィンは机に両肘をつき手を組むと、大きくため息を付きながら話し始めた。
「クレア、リヴァイ、よく無事に帰還した。話は全てハンジから聞いていたが…リヴァイ、何か私に申し開きしたい事はあるか?」
エルヴィンは真っ直ぐとリヴァイを見据えるが、当のリヴァイは眉一つ動かさず答える。
「何もねぇよ。」
リヴァイがエルヴィンに返す視線も真っ直ぐだ。
数秒の間沈黙に包まれたがこの2人は交じり合う視線のみで会話をしている様だった。
エルヴィンは思う。
クレアに対する個人的な感情は断ち切ったとはいえ、無事に戻ってこれたのは紛れもなくクレアがリヴァイのものであったからだ。
でなければ、このハンジの事だ。クレアの捜索に無茶をし、大きな損害を出していたかもしれない。
団長という立場の自分ではこんな独断的な行動は間違いなくとれなかっただろう。
そう考えると、どうまかり間違っても最初からクレアを自分のものにする事など不可能だったんだと、目の前のリヴァイを見てエルヴィンは改めて思い知らされる。