第28章 リヴァイの約束
「さっきはたいした乱れっぷりだったな。」
意地悪にリヴァイがクレアの頬についたままの土を指で払ってやった。
「へ、兵長!!」
思わず顔を背けると、クレアは壁外の森には似つかわしくない物が落ちているのに気がついた。
思わずかけより手にとって見る。
「これは…」
どうみても手帳だ。でも、誰の?
中身をめくろうとしても風雨に晒されていたためか、うまくいかない。仕方なくバリバリとページをめくっていくと、信じられないことが書かれていた。
私は…
故障…
放棄…
失う…
絶望的…
屈しない…
6m級…
すぐに食べない…
喋った…
ユ…ルの民…
ユミル様…
表情を変えた…
問いかける…
応答はない…
部分的にしか読めないが、これはここで最期を迎えた兵士の命を賭けて残した戦果だろう。
「おい、どうした。」
黙ったまま立ち尽くすクレアにリヴァイが声をかける。
「あの…兵長これって…」
「……なんだ…これは…!」
この手帳の持ち主は不明、いつの壁外調査であるかも不明であるが、少なくてもここに落ちているということは、ウォールマリア陥落後以降の物である事には間違いないだろう。
故障、放棄、この辺りは立体機動装置のことか。
失うとは仲間か、おそらくは馬。
帰還は絶望的な状況であるが決して屈しないという強い信念も読み取れる。
そして2人が驚いたのはその後だ。
すぐに食べない、喋った、ユミル。
これは遭遇した巨人の事を書いたのだろうか?
読み取れる単語だけでもその内容は衝撃的なものばかりだ。
「誰が書いたのかは分からねぇが、これは持って帰るぞ!もう間もなく日の出だ、急げ!」
「は、はい!!」
2人は馬に跨りトロスト区まで最高速度で走り出した。