第27章 リヴァイの想い
抱きしめられる腕からリヴァイの想いがクレアに流れ込む。
規律を乱すような独断行動をしてでも、その先に処罰が待っていようと、リヴァイは自分を探しに来てくれた。
不謹慎であるのは百も承知だが、人類最強と言われている想い人のリヴァイからそんな事をされてしまえば、嬉しく思わない方がおかしい。
「…わ、私なんかのために…ありがとうございました…」
クレアは胸元にまわされた腕をギュッと掴んだ。
だたただリヴァイの気持ちが嬉しかったのだ。
「分かったならいい…だが、お前を見つける事ができたのは俺だけの力ではなかったけどな。」
「!!」
そうだ、クレアにはもうひとつ聞きたい事があった。こんな森の中で人1人探すことなど困難極まりない。何故こんなタイミングよく見つけてもらえたのか、クレアは聞きたかった。
「…どうして兵長は私の居場所が分かったんですか?」
「最初はデイジーが、走るのはやめて歩いて探せと俺に言ったんだ。」
「デイジーがですか?」
「ああ、確かに走り回っても周りの景色は飛んでしまうからな。歩いて探した方が見つかりやすいだろうと思って歩きながら探してたんだが、最終的に見つけることができたのはコレのお陰だった。」
「え?」
すると、リヴァイはクレアの被っていたフードをとって、キレイにまとめ上げてある髪の毛にキスをした。
「夜の風がキンモクセイの香りを運んできた。ほんの微かだったがな。それに気づかなければ本当に間に合わなかった。最終的にはお前自身に救われたな。」
「本当にそんな事が……」
──きっと兵長が見つけてくれますように──
クレアは自分自身でかけた願が現実となって叶うなど思っても見なかったため、心底驚いた。
母親が好きだったキンモクセイ、香油屋夫婦の想い。自身を奮い立て、リヴァイをも引き寄せてくれたキンモクセイの香り。ここまでくると、この花の香りには本当に不思議な力があるのではないかと感じずにはいられなかった。