第27章 リヴァイの想い
「おい、どうしたデイジー。クレアがいるのか?」
すると、デイジーはリヴァイの胸元を軽くドンと押した。様子から察するに否だ。
「…走りたくない、訳ではなさそうだが…俺に走るなと言っているのか?」
前掻きをしながら頸を縦に振り出した。
おそらく応であろう。
リヴァイは少し落ち着きを取り戻しながら考える。暗くなりだした森の中を闇雲に走り回ってもクレアを見つけることはおそらく不可能だ。
今夜は運良く月明かりが差し込みそうな天気。
クレアは立体機動装置が機能していれば木の上に、故障していれば落下をしているはずだ。
地道なやり方にはなるが周りを見渡しながら歩いて探すの方が見つけやすいだろうと、リヴァイはデイジーによって気付かされた。
「デイジー、俺に歩きながら探せと言いたいんだな?…冷静さを失っていたな。すまなかった。」
そう言うと、デイジーはリヴァイに頬ずりをした。
きっと言いたかったことが伝わったのだろう。
リヴァイはダスゲニーとデイジーの手綱を持ちながら歩き出した。
上から下まで、見える範囲の全てに目を光らせリヴァイはクレアを探した。
道なき道をひたすら2頭の馬を連れながら歩く。
人の足で探せる範囲などたかが知れてる。タイムリミットは巨人が活動を始めだす明日の日の出までであろう。
馬達に十分な水やエサも与えていない。
この2頭の体調も心配だ。
とにかく何が何でも夜明けまでにクレアを見つけなければ…
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どのくらい歩いただろう。
足場の悪い森の中で、数時間は歩いただろうか。
木々の間から見える月の位置がその歩いた時間をリヴァイに伝えようとしている。
まだ春になりかけの3月の夜。
冷え込んだ空気の中、リヴァイはジトリと汗をかきながらクレアを探し歩いた。
この汗は焦りからくるものなのか、疲労からくるものなのかは分らない。
だが、リヴァイは歩みを止めるわけにはいかなかった。
「クソッ…クレア、どこだ…」
何が“後は俺がなんとかする”だ…
ハンジに規律を乱すような約束事をさせ
あれだけの大口を叩いて2人を陣形に戻らせた
この選択も間違いだったというのか?!
結局俺はまた選択を間違えて繰り返すのか…
また繰り返してふりだし戻りか…