第27章 リヴァイの想い
身体は冷え込めば冷え込むほどに、温もりを強く求めてしまう。
当たり前だ。
ここには温かな毛布も、暖炉も、スープもないのだ。
生きてくために必要な物が欠けているとなれば、身体が強く求めてしまうのはごく自然なこと。
しかし、今のクレアが望んだものは毛布でも暖炉でも温かなスープでもなかった。
「………リヴァイ…兵長……」
身体がシンシンと冷えてくると、生きて帰還する方法を冷静に考える余裕など皆無だ。
今クレアの全てが求めているものはリヴァイの温もりであった。
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日が傾き、夜の帳が落ち始める頃、リヴァイはデイジーを並走させながら必死にクレアの姿を探していた。
「クソッ、どこにいやがる!!」
巨大樹の森程大きくはないが、この森とて負傷した人間1人を探すとなれば一大事だ。
怪我をしてるかもしれないとなれば早く見つけてやらなければ……
今のリヴァイは焦る気持ちを抑える事なく感情剥き出しの状態だ。
──何に変えても守る──
クレアと結ばれた時、キンモクセイの香りに誓ったのだ。もう絶対に後悔はしないと。
──「もしクレアの命に関わるような緊急事態が起きたら紫の信煙弾を3発だ。その後は俺がなんとかする。」──
時遡ること3ヶ月前。
この言葉は、昨年の12月に行われた壁外調査前にハンジの執務室で内密に交わされた約束事であった。
ファーランとイザベルの時の様な後悔は絶対にしない。どんな時であっても必要ならば自分が必ずこの手で助けにいく。
それが例え自身の立場を危うくするものであっても構わない。
まさかこんなにすぐに緊急事態が起こるとは思ってもみなかったが、そんな事今はどうでもいい。
リヴァイは走らせるスピードを更に上げようとしたその時だった。
「ブルンッ!!」
デイジーが全速力で走ることを拒みだしたのだ。
「おいどうした?!急げ!お前の主人を探しているんだ!」
デイジーはリヴァイの愛馬ダスゲニーに比べると少し小柄だが、従順で、持久力も申し分なかった。
この程度で疲れる筈はない。
しかし、デイジーは、走りたくないとばかりに頸を上下に激しく振ると、ついに歩みを止めてしまった。
そして何かを訴えるかの様に前掻きをしている。