第26章 奇行種、飛ぶ
「………バカヤロウ、そんな…いじらしい事をしてくれるな。我慢できなくなるだろうが!」
そう言うと、強引に口づけをし、クレアの息が苦しくなるまで荒々しく口内を貪った。
「うぅ……んん……」
クレアの息が限界のところで唇を開放させると、溢れてしまった唾液を親指で拭ってやる。
「お前の気持ちはよく分かった。有り難く受け取った。だからクレア。お前も死ぬんじゃないぞ。」
真っ直ぐに自分を見つめるその視線に、クレアは情けない言葉など言いたくはなかった。
「はい、きっと生きて兵長の元に戻ってきます。」
するとクレアはスッと敬礼をして見せ、食堂に向かうため執務室を後にした。
リヴァイはクラバットとジャケットを整えるとあることに気がつく。
「……。」
クレアの付けたキスマースと内ポケットにしまってあるクレアから貰ったハンカチ、ジャケットに付いてる紋章までもが偶然にもピタリと重なるのだ。
これほどの加護はないだろう。
リヴァイは左側の身ごろをめくって内ポケットの辺りに1度キスをすると、深呼吸をし、集中してしまった熱を鎮めてから食堂に向かった。
──────────────────
「……ハンジさん、あまり信煙弾上がりませんね。」
今調査兵団は、12月に新しい拠点の候補地になっていた場所まで行き、本格的な補給拠点の設営をしていた。
ハンジ班は前回同様設営の間の巨人討伐担当だ。
しかし、前回討伐担当した時と比べると、巨人がやってくる数が少ない気がする。
「う〜ん、確かに…」
ここは壁外なのだから毎回同じ展開になるわけ無いのは百も承知だが、やはり前回と違うとなれば、不安な気持ちは隠せない。
「まぁ、不穏な空気は否めないが、今それを心配しても仕方ない。無事に拠点の設営が完了して、団長が合図を出すまで待とう。」
モブリットが周りを見張りながらクレアに返事をした。