第26章 奇行種、飛ぶ
「あ、あの…兵長……」
「なんだ?」
「どういうふうにしたら、跡が付くんですか?…教えてください……」
…なんだよ。
こいつは付け方も分からないくせにあんな大胆な事をしてくれたのか?
いや、コイツは処女だったのだ。知っている方が方がおかしいだろ。だからむしろ知らなくていいんだ。
リヴァイはまさかの質問にグルグルと思考をめぐらせてしまう。
いったいコイツはどんだけ自分を振り回せば気が済むんだと再びため息がこぼれてしまうが、奇行種クレアが相手ではもう仕方あるまい。
こんな女が自分の目の前に跨り懇願されるように見つめられてしまえば断れる男などいやしないだろう。
リヴァイは重い口を開いた。
「そんなに難しくはない。唇を当てて空気が入らないように吸ってみろ。ほら、どこでもいいぞ。」
「わ、わかりました。では兵長の心臓の上に…」
すると、クレアは意を決した様に、ゴクリと唾を飲み込むと、リヴァイの胸元に唇を当て、少し力を入れて吸い上げた。
「ん…んん…」
うまくできているかなどわからず、思わず情けない声が漏れてしまう。
一方リヴァイは長らくクレアと触れ合えていなかったのだ。そんな恋人が、必死になって胸元に唇を当て、跡を残そうと一生懸命になっている。そんな姿を見てしまえば、いじらしくなってしまうのは当然の反応であろう。
もう壁外調査など、さっさと済ませてリヴァイは早くクレアと繋がりたいという想いでいっぱいになってしまった。
「ぷはぁ……」
唇を離すと、少し息を上げたクレアの頬は少し赤かった。照れているのだろうか。
「あ、兵長。私にもできました!」
クレアが指をさす先には少しいびつな形の赤い跡。
「あぁ、初めてにしては悪くねぇな。」
その言葉に満足をすると、クレアは再びリヴァイの心臓の上に付けた跡に軽く唇を当て、触れるだけのキスをする。
「とるに足りない加護ですが…兵長、どうかご武運を…」
「!!!」
クレアが跡を付けた意味、付けた場所、その想いを理解すると、胸を締め付けられたリヴァイは思わずクレアを抱きしめてしまった。