第26章 奇行種、飛ぶ
そして、3月に入れば壁外調査にむけ、本格的に訓練が再開されてしまう。
みな、立体機動や騎乗での勘を取り戻すのに必死になって訓練に打ち込んでいた。
そうなると、リヴァイの仕事もさらに忙しくなり、朝の時間もバタバタと仕事をこなすだけで精一杯で、まともにゆっくり話をする時間などなかった。
「あの…寂しくなかったと言えば嘘になりますが…私はどんな形であれ、兵長とご一緒できる時間があるだけで嬉しいです。なのでどうか謝らないでください…。」
違う……それは嘘だ……
クレアは本当は寂しく思っていたし、2人きりで存分にリヴァイの愛情を独り占めしたい時もあった。
しかし、リヴァイの仕事の忙しさも、自分の兵士としての立場も考えると、どうしても思うがままの気持ちを答えるのをためらってしまい、遠慮がちな返答をしてしまった。
「そうか…」
クレアの返事を聞いて、答えたリヴァイの声のトーンは少し低かった。
「…?!」
不思議に思い顔を上げると、その瞬間に唇を奪われてしまった。
まわされた腕に力を入れられグイッと引き寄せられれば自然と深い口付けになってしまう。
「んん……」
息が苦しくなったところで唇が離れると、眉間にシワを寄せたリヴァイがクレアに問いかける。
「俺はこういう事がしたくて頭がおかしくなりそうだったんだが…お前は俺が欲しいとは思わなかったのか?朝顔を合わせるだけで十分だったと?」
「…………………。」
リヴァイの切ない表情を見ると、自分の気持ちに嘘をつき優等生ぶった事を言った自分が急に恥ずかしくなってしまった。
「あ…あの…兵長、ごめんなさい……今のは、嘘です。兵長と自分の立場を考えると、どうしても素直に言えなくて……」
……そんな事は分かっていた。どうせ忙しい俺と、下級兵士の立場を考えて遠慮をしたんだろう。
でも今聞きたいのはそんな遠慮がちな気持ちではなかった。
「じゃあ、お前の素直な気持とはなんだ。俺はそれを聞きたかったんだ……」
するとクレアは自身の膝をギュッと握るとポツリポツリと喋り始めた。