第26章 奇行種、飛ぶ
「フレイア、調査兵団で1年き残れるってすごいことだよ!!もう同期は私とフレイアと、あと数人しか残ってないけど…壁外調査は運だけでは生きて帰ってこれないから。フレイアが生き残っているのには確かな実力が伴っているって証でもあるんだよ!」
「クレア……」
「だから、今自分が生きている事に自信を失わないで…じゃないと、今日は壁外調査なんだから…。」
フレイアは真面目に訓練に打ち込んでいたが、自分がクレアの様な精鋭になれるタイプの兵士では無いことは十分に理解していた。
だから毎回壁外調査の日の朝は怖いのだ。
──今回死ぬのは自分の番なのではないか──と
しかし、クレアの言うとおり、討伐補佐として数を上げてきているのも事実。
そんな言葉に少し救われた気持ちになるとフレイアは少し笑顔に戻りながらクレア言った。
「弱気になってごめん……無事に戻ってきて、新兵迎え入れてあげないとね!」
「そうだよ!必ずまた生きて戻ってこようね!」
2段ベッドの上から手を出されるとクレアも手を伸ばし握手を交わしてから部屋を後にした。
フレイアの言葉は思いの外クレアの胸にズシリと重くのしかかった。
自分は訓練兵団を主席で卒業したが、壁外に出てしまえば死ぬ確率は、リヴァイなどを除けばほぼ同じである。
秋に行われた壁外調査で大怪我をしたが、主席で卒業していても怪我をするのだ。死ななかっただけ幸運だったと言える。
しかし、クレアには医療兵としての責任もあり、簡単に死ぬわけにはいかないのだ。
今一度弱気になりかけた自分に蓋をすると、リヴァイの執務室に向かった。
カギをあけて入るが、今日は掃除を始める前にリヴァイがすぐにやってきた。
「兵長、おはようございます。」
クレアは掃除をするのをやめ、紅茶の準備を始めようとするが、ヤカンに火を入れようとしたところで後ろからリヴァイに制止されてしまった。
「…?!兵長?」
気がつけば自分の背後ぴったりにリヴァイがくっついている。
いったいどうしたのだろうか……
クレアの胸はドキドキとうるさく騒ぎ出してしまった。