第25章 想いの果てに
「そしたらジュディアに中をお願いしなさい。お前がいない間に来客もあったから客引きにはもうでなくていい。」
「わかったわ。ではお兄さん、こちらへどうぞ。」
「………。」
モブリットはカーテンで覆われた隠し扉の向こう側に案内された。
──カチャ──
扉1枚隔てた向こう側はまったくの別世界で、足元の感触からただよう匂いに至るまで、現実からかけ離れたものであった。
今まで娼館を利用したことのないモブリットにしてみればまったくの未知の世界だ。
そして、「空き」と書かれたプレートのかかった個室に案内される。
室内は天蓋付きの大きめのベッドにシャワー室、トイレまでが備わった立派な造りであった。
女はモブリットをベッドに座らせると、膝を付き柔らかい笑顔で問いかける。
「ご指名ありがとうございます。今宵は、どんな私を御所望でいらっしゃいますか?なんなりとお申し付け下さいませ。」
この女の言葉で改めて自分は、金で女を買おうとしているのだと自覚する。
ハンジに対して後ろめたい様な、自分の中の正義に反している様な複雑な気分になったが、ここまできてしまってのだ。もう腹をくくるしかない。
深々と頭を下げる女にモブリットは思い切って注文をした。
「まさかとは思うが、調査兵団の兵服なんて物はないよな?」
すると女の口元がクスリと笑う。
「もちろん、ございますよ。細部に至るまで細かく復元したものが。」
「そうか。さすがだな…では、それで頼む。」
「かしこまりました。」
立ち上がり一旦出ていこうとする女の腕を掴むと、モブリットはまだ注文は終わっていないとばかりに続けた。
「あと、化粧はとってきてくれ。それと、メガネをかけてきてくれ…それと…髪を高い位置で結んできてくれ……」
こんな注文の多い客は嫌われるだろうか。
少し不安になったが、女は素直に了承した。
悶々としながら待つこと15分。
──コンコン──
「お待たせいたしました。」
女が調査兵団の兵服を着て入ってきた。
「!!!」
思わず立ち上がるが、兵団のマントを羽織り、深々とフードまで被っている。
これも演出の1つなのだろうか。
モブリットは少しずつ近づいていった。