第24章 いつもと同じで違う夜
驚いている2人にさらにハンジは続ける。
「エルヴィンよく周りを見てごらん。積もった雪から突き出ている木の枝をさ。カマキリの卵はここの囲いにあるだけではないんだよ!」
「…………………。」
エルヴィンとリヴァイは目をこらしながらこの辺りを歩いて突き出ている木をよく見ると、ちらほらと同じような物体を発見した。
それらは全て雪に埋もれてはいなかったと同時に、なんとなくではあるが、みな同じくらいの高さに産みつけられているように感じる。
「ほう…確かに面白い。鼠は火事になる家からは出ていくと昔から言うしな。動物や虫には人間では考えられないような特殊な能力を持っているのかもしれないな。」
「でしょ?!」
「ハンジ、この辺一帯の卵が孵ったらまた報告してくれ。」
「おいエルヴィン、そんなこと言っていいのか?あのクソメガネ、また調子に乗って熱上げるぞ。」
「まぁ…リヴァイの言いたいことも分かるが、興味深いのも確かだ。ハンジに任せるのが適任だろう。」
「チッ、そうかよ……」
エルヴィンの反応に十分満足したのか、ハンジはまだ痛む頭をさすりながら雪掻き作業の準備へと取りかかった。
──一週間後の夜──
この日は降雪がいったんやんだため、午後からは立体機動の訓練をとり行うことができた。
「連日の雪掻きで体力は付きましたが、久しぶりの立体機動の訓練では勘は少し鈍ったように感じます…早く積雪も落ち着いて欲しいですね。」
「クレアはあれで鈍ってたって言うのかい?まったく敵わないな…」
ハンジの執務室で精製作業をしながらクレアは今日の訓練の感想をモブリットと話していた。
すると、ちょうど精製が出来上がったようで、クレアは、貴重な媚薬を小瓶に移すと、金庫に入れて施錠をする。
「ハンジさん、次の準備始めても宜しいでしょうか?」
「…………………。」
……しかし、返事がない。
モブリットの方に目をやると腕を組んでため息をついている。
まさか……
「あぁ!!ハンジさーん!!さっきまで普通に話してたじゃないですかぁ……」
ハンジは毎度恒例の“燃料切れ”を起こしていた。