第24章 いつもと同じで違う夜
「よく見てエルヴィン、リヴァイ。コレ、何だと思う?」
何だと思うと聞かれても……
エルヴィンは顎に手を当てて考え込んでしまう。
囲いの中には数本の枯れかけた木の枝が雪から突き出ているだけだった。
兵舎の裏は基本手付かずの草や低い木が生い茂っている無法地帯で、わざわざこんな所に目印を立てて何をやっているのかエルヴィンにもリヴァイにもまったく分からなかった。
「おいクソメガネ、さっさと要件を言いやがれ。」
「まぁまぁそんなに慌てない慌てない!リヴァイはせっかちだなぁ!クレアにはあんなに奥手だったの……ダァァァァ!!!いってぇーーー!」
余計な事を言い出したハンジに青筋を立ててキレたリヴァイは、すかさず頭を掴むと握力の限りを使ってメリメリと万力の如く力を入れていった。
暑い手袋をしているにも関わらず、その破壊力は抜群だ。
「分隊長!!」
「ハンジさん!!」
「アハハハ!いってーー!アハ!ハハ!」
「へ、兵長…それくらいにしてあげて下さい…ハンジさんの頭、壊れちゃいます。」
クレアが間に入りリヴァイをなだめると、ようやく手を離した。
「なんだよ…こいつの頭はもとから壊れてるじゃねぇかよ。」
「兵長!!それはひどいです!」
すかさずクレアは否定をした。
一方リヴァイのその言葉にエルヴィンとモブリットは、黙って小さく頷いてしまったが、まだここで聞くべき話を聞いていない。
すると、クレアが記録書の様なものをエルヴィンに手渡した。
「ん?ハンジこれはいったいなんだ?」
「アハ…いってー…あぁ、それはね、年末から降り始めた雪の積雪記録だ。」
「積雪記録?」
「兵舎裏のこの辺は雪が降っても手付かずでしょ?だから朝と晩に積雪の高さを1日もかかさず計っていたんだ。」
言っている意味が分からないわけではないが、いったい何のために?
「ほら、2人とも。ここを見てごらん。」
ハンジが指さした所にあったの物は、枯れかけた木にくっつけられた様な茶色い物体であった。
「これは何だクソメガネ。」
「コレは、12月に私が会議で話していたカマキリの卵だ。」
「「!!??」」
「この豪雪にも関わらず、今に至るまで雪に埋もれてはいないんだ。これが見事に孵れば私の話も信用してもらえるかな?」