第24章 いつもと同じで違う夜
──2月──
年末あたりから降り始めた雪はあれよあれよという間に積もりだし、壁内は稀にみる豪雪に見舞われた。
こうなってしまっては壁外調査はおろか、訓練もままならなくなってしまう。
午前は兵団の全員で雪掻き、午後に訓練を。
それも難しいと判断された日は1日兵舎内で自主トレという名の自由行動が許可される事もあった。
2月に入ってからもその様子は変わらず、積もっては雪掻きをし、積もっては雪掻きをしての繰り返しの日々であった。
毎日鍛えている兵士でも、さすがに1日雪掻きは気が滅入ってしまう。
毎日毎日辺りは白一色で、掻いても掻いてもその場から再びシンシンと静かに音も立てずに積もっていくのだ。もうため息しかでないだろう。
しかしそんなある日、訓練の予定が雪掻きに変わると一際ハイテンションになる人物が1人……
「エルヴィーーーーン!!!リッヴァーーーイ!!!」
厚手の手袋をし、スコップを持ち雪掻きの準備をしていた2人の所に鼻息を荒くして飛んできたのはハンジだった。
「どうしたハンジ、そんなに慌てて。」
「うるせぇぞ、クソメガネ。暑苦しい。」
「なんだよリヴァイ!こんだけ寒いんだ!少しくらい暑苦しいくらいのほうが調度いいだろ!アハハハ!!」
そう言いながらハンジは2人の手を掴んでグイグイと走り出した。
持っていたスコップが2本重なるように倒れてしまう。
「おい!どこへ行く!」
「こっちこっち!!早く早く!!」
早くと言われても、ハンジは雪掻きがまだ施されていない兵舎裏の方に向かおうとしている。
積雪のせいで急げるはずも無い。
ズボズボと深い雪に足を抜き差ししながら進むこと数分。
「リヴァイ大丈夫?ちっちゃいからうまっちゃうかな?」
「うるせぇ!!削ぐぞ!!」
ハンジの冗談に苛つきながらも進んでると、遠目にクレアとモブリットの姿が見えてきた。
2人の前には4本の細くて高い木の柱で囲われた囲いがある。
「ハンジ、これは一体何だ??」
エルヴィンが怪訝な顔でその囲いを覗き込むと、よくぞ聞いてくれましたとばかりにハンジは喋りだした。