第22章 リヴァイ、悔いなき選択 奇行種、困惑
何気なく答えた返事に動揺したのはマーサの方だった。
「やだ…私ったら…ごめんなさい…」
こんなにも若くして両親を亡くしているクレアの事を心配したのだろう。2人の顔色が少し曇ったようにクレアは感じた。
「あ、こちらこそいきなりすみません…もうだいぶ時間はたちましたし、私の気持ちはだいぶ前に整理はついてるんです。どうかお気になさらないで下さい。」
クレアはマーサの手を握ると、ニコリと笑顔をみせた。
「でも、帰る実家も無く兵舎で1人なんて心細いでしょう。何かあったら家にいらっしゃいね!」
「ありがとうございます!嬉しいです。」
調査兵団には身内を亡くして帰る実家のない兵士も結構いる。そのため特に今まで心細さを感じた事などなかったが、今は素直にマーサの言葉が嬉しかった。
「ほら、追加の香油おまたせ!何か困ったら相談してくれよ!力になるからよ!」
グレンは大きな手に握られた小瓶をそっとクレアの小さな手に手渡した。
……困ったこと?そうだ!もう1つクレアは夫妻に聞きたいことがあってここにきたのだ。
「あ、あの…グレンさん、マーサさん。お言葉に甘えてちょっと相談したいことがあるのですが……」
「お?なんだい?恋の相談か?!」
「はい……」
「いいぞいいぞ!若いってのはいいねー!」
赤くなってうつむいてると、マーサがハーブティーを淹れてクレアをテーブルまで案内してくれた。
「今の彼と何かあったの?」
「いいえ、そうではないのですが……実はもうすぐ誕生日と知りました。でも私より階級の高い人なので薄給の私では何を買っていいのかわかりません…でもその人にはたくさんお世話になってて…今日着てる服もその人が仕立ててくれたもので…何か返したいのですが、何も思い浮かばなくて。」
クレアはあるがままに相談をした。
何か解決の糸口になる答えが欲しい…
クレアはコートの裾をギュッと掴んだ。
「まぁ、そういう時って“一緒にいてやるだけで十分なんだよ”ってのが王道なんだが、それじゃあ嬢ちゃんは嫌なんだろ?」
クレアはコクリと頷いて見せた。
「そしたらよ、その“一緒にいてやる時間”が何か特別なものになる様にしてやったらどうだい?」
「!!!」